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2008年06月18日(水) 15時42分

【徹底取材】「健康食品に副作用なし」と宣伝する業者の真実ツカサネット新聞

健康食品のサイトで宣伝を見ると、しばしば次のようなくだりを見かけることがある。

「これは薬ではなく食品ですので、いくら召し上がっても副作用はありません」

医薬品は用法・用量が決まっているが、健康食品は食べ物なんだから、そんなこと気にせずどんどん食べてどんどん買ってくれ。ということのようだ。

しかし、効能のところでは、食品なのに特効薬のように書いておきながら、都合のいい時だけ「食品」にしてしまうのは変な話だ。

厳密に書けば、「副作用」というのは医薬品に使われる用語なので、たしかに食品に副作用はない。ただし、同じ状態を表現する言葉として、健康被害というものがある。健康食品の業者は、いったい、そのへんをどれぐらい理解して自社製品を販売しているのだろう。

そんな疑問を抱いた私は、業者にその点を確認してみることにした。検索エンジンで上位にきたアガリクス、メシマコブ、ブロポリス、AHCC、フコイダンの業者2社ずつ、糖鎖の業者1社で計11の業者と、2つのNPO団体(業者の宣伝部門)に、「食べ過ぎることへの健康被害はないのか」と尋ねた。

その結果を食品ごとに見ていこう。まず、「アガリクス」は1社が回答なし、1社が「今までにそのような報告はない」だった。しかし、アガリクスが原因とされる健康被害は、公然としているものだけでも、「肺がんの手術を受けた72歳の男性が、健康食品による薬剤性肺炎と診断された」「55歳の胃十二指腸潰瘍と鉄欠乏性貧血のある女性がアガリクスを摂取したところ、ALP、γーGTP値が上昇した」(いずれも独立行政法人 国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の素材情報データベース」=以後「データベース」と表記)など、多数の「危険情報」が報告されている。

それが自社の製品でなかったとしても、どのような仕組みでその健康被害が発生したのかがはっきりしない以上、アガリクスの業者は、「アガリクスでそのような事故があった」という事実についてはきちんと告知すべきである。

次にメシマコブについては、1社は「ごく稀に吐気、食欲不振、下痢、胃部不快感等の症状が現れることがある」と回答。もう1社は回答してくれなかった。「データベース」を見ると、たしかに「大量に摂取すると下痢や嘔吐を引き起こす」という報告が書かれている。回答してくれた業者は、正直かつ的確に答えてくれたわけだ。

「ブロポリス」は、1社が「体質や体調によっては、ごくまれにからだに合わない場合もある」と回答した。もう1社は、何と「プロポリスの大量飲用による健康への害はないと考えられます」と言い切っている。

プロポリスは、蜂の巣から分離する際に不純物(巣の副産物)が含まれるため、服用によって蜂やハチミツのアレルギー反応が生じることがある。「データベース」には、「安全性については、ハチやハチの生産物にアレルギーのある人(特に喘息患者)は使用禁忌であり、外用で用いた場合(化粧品を含む)に接触性皮膚湿疹を起こすことがある。妊娠中・授乳中の安全性については信頼できるデータがないので摂取はさけるべきである」と書かれている。「健康への害はないと考えられます」などと、よくもいえたものだと思う。

「フコイダン」は、「データベース」でもとくに「危険情報」はない。しかし、「フコイダンを飲むことは、もずくを食べていることと同じですので、副作用の心配はございません」(フコイダン業者A)といった回答があったのはいただけない。

こちらがわざわざ「健康被害」という言葉で質問しているのに、「副作用」と回答している。今回いちばん気になっていた「食品と医薬品の区別もつかない業者」であることを、はしなくも露呈しているわけだ。

そのほか気になる回答としては、「健康食品は、いわゆる一般食品からの抽出物使用なので問題なし」(団体A)というのがあった。むしろ特定成分の「抽出」だからこそ、一般の食品だったらあらわれないような顕著な作用が発生する可能性があるのだ。

これらをまとめると、13社・団体のうち2社が回答してくれなかった。次に、「今までにそのような報告はない」と回答したのが4社、「食べ過ぎてはいけない」というありきたりの回答が3社あった。公然とされた症例にそって具体的に教えてくれたのは、メシマコブ業者1社だけだった。

もちろん、業者がいい加減だから、その健康食品が絶対にダメだということではないし、逆に、メシマコブ業者が誠実だからメシマコブも効果がある、とは限らない。その健康食品が効くかどうかと、業者の態度は別問題である。しかし、商売は信頼関係が第一。信用できない業者では、健康を委ねる商取引などする気にはなれないだろう。

あなたの気になる健康食品。業者には「健康被害」について確認することをお勧めする。それによって、食品の健康被害だけでなく、業者の見識やモラルも明らかになることだろう。


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(記者:顰見倣)

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