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2008年06月18日(水) 21時45分

後期医療で病院職員の給料「遅延」も医療介護CBニュース

 後期高齢者医療制度に伴い、医療機関への診療報酬(医療費)のうち、社会保険から移行した分の支払いが、制度の導入前より最大で10日も遅れるという問題が指摘されている。赤字経営の病院が全国で4割を超える中、医療費の入金の遅れで、資金繰りが厳しい病院では、職員の給料の支払いを先延ばしして対応する事態も想定される。

 医療機関が受け取る診療報酬は、国民健康保険を対象にした「国民健康保険団体連合会(国保連合会)」と、社会保険を対象にした「社会保険診療報酬支払基金(支払基金)」に大別される。国保連合会は各都道府県に設置されており、支払日は毎月おおむね25-30日、支払基金では毎月20日ごろとなっている。
 同制度は、都道府県単位の「後期高齢者医療広域連合」が運営しており、診療報酬は国保連合会を通じ、おおむね25-30日に支払われる。

 同制度の施行で、社保に加入していた給与所得者(本人)と、社保の子ども世帯の扶養家族になっていた人(被扶養者)が、社保を脱退し、同制度に移行。同制度の対象者約1300万人のうち、社保からの移行は、本人約50万人と被扶養者約200万人の計約250万人に上る。

 医療機関にとっては、同制度が導入されるまでは社保だった分の診療報酬の請求先が、支払基金から広域連合に変更になった。このため、20日ごろに支払われていた診療報酬が、25-30日にずれ込むことに。診療報酬の支払いを広域連合が30日にした場合は、従来に比べ10日遅れになる。

 医療機関の多くが、支払基金からの診療報酬を基に、25日を職員の給料日に設定しており、25日は1か月のうちで最も多くの資金が必要になるという。しかし、入金日が遅れることで、厳しい経営を強いられている医療機関が、25日だった給料日をずらすなどの可能性も懸念されている。

 実際、山形県内のある中小病院(約250床)の事務長は、「うちの病院では、社保の約15%が75歳以上だった。これまでは支払基金から21日に診療報酬が支払われていたが、制度の導入で国保連合会から28日に支払われることになった。その額は約3500万円になる。支払基金からの入金を基にして、25日を給料日にしているため、資金繰りが苦しくなった。何とかやりくりしているが、困っている」と話し、高齢者医療に力を入れている医療機関ほど影響が大きいのではないかと心配している。

 この問題を指摘していた全日本民主医療機関連合会では、「入金の遅れで資金繰りが厳しくなる病院が増えると考えられる。医療を年齢で差別するという内容はもとより、医療機関への診療報酬の支払いにも影響を与えるなど、制度は問題ばかりで、すぐに廃止すべきだ」と話している。






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