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2008年06月17日(火) 11時40分

白骨遺体横の“遺書”が告発する日本の現状オーマイニュース

 6月11日付の中国新聞(ウェブ版)にこんな記事があった。

10日午後1時20分ごろ、広島市東区牛田新町3丁目の国道54号祇園新橋の下で、白骨化した身元不明の遺体が見つかった。死後1年は経過しているとみられ、広島東署が身元や死因を調べている。(中略)目立った外傷はなく、事件性はないとみられる。

 この「祇園新橋」は私が普段よく渡っている橋である。橋の下は自転車が通行でき、通勤、通学の人たちが多く利用している。だから、気づかなかったことに驚いた。そこでとりあえず現場に行ってみた。

 白骨遺体があったのは橋の下にある高さ2メートルのコンクリート土台の上、鉄骨の裏に空洞がある場所。その中に寝泊りしていたようだ。

 亡くなった方は、あまり食事をしていなかっただろうから、それほど窮屈ではなかったのだろう。

 周りは今でも少し異臭がしていたので、死後はかなりの死臭がしたと思われるが、自転車で通り過ぎる人が多いし、まさか人が死んでいるとは思わないので気にしなかったのかもしれない。

 自殺者は2007年度も3万人を超えた(厚労省が6月4日発表した人口動態統計では、3万0777人)。これで、1998年以来、10年連続での3万人超となったわけだが、こういった孤独死は1年間で何人いるのだろうか?

 今は戦後最長の好景気だそうだが、私には日本が発展しているような実感はなく、戦後直後に逆戻りしているように感じる。

 日本国憲法のもとではホームレスの存在はありえないはずなのだが、ホームレスをすべて強制的に生活保護しようとすると、この国は確実に破綻する。だから国はホームレスを見て見ぬふりをするし、国民も「怠けて働かないからホームレスになった」と自分たちの無関心を正当化する。そこに法律では救えないホームレスが存在することになる。

 少しでもホームレスを減らす知恵を絞ろうとしない者こそ怠けているのではないだろうか?

 広島は「核兵器のない平和な社会」を目指しているが、その前に「見殺しのない平和な社会」を目指した方がいいと思う。

 亡くなった方の遺書はない。だが、近くに「大型ゴミの不法投棄は、犯罪です」という掲示があった。私にはこれが亡くなった方の遺書のように思えてならない。

 「国に不法投棄された私は、いったい誰に訴えればいいのか? 国の犯罪ではないのか?」

 そんな意味に受け取れたからだ。

(記者:昿野 洋一)

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