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2008年06月17日(火) 08時01分

米大統領選 ネットの顔勝利 強力「政治ブログ」…的中「オバマ」 産経新聞

 米民主党の大統領候補にバラク・オバマ上院議員が内定したことを受け、サンフランシスコで1人の政治ブロガーが祝勝会を開いた。彼の名は、マルコス・モーリツァス(36)。1日に150万件近いアクセスを記録する米最大の政治ブログ「デイリー・コス」の創設者で、民主党寄りの草の根ネット世代=ネットルーツの顔とも言える人物だ。(サンフランシスコ 松尾理也)

 「2004年の民主党大会で、オバマ氏は基調演説を行った。それを聞いた僕は『次の大統領はオバマだ』と書いた。06年の中間選挙もやはり『次はオバマだ』と書いた。既存のメディアは、こんな時代の変化についていけなかった」

 サンフランシスコの初夏の夕暮れ。市内中心部にあるホテルに設けられた会場で、モーリツァス氏は意気揚々と自らの先見の明を強調した。

 モーリツァス氏は現代を「専門家やプロのメッキがはがれ落ちる時代」だという。「僕らは本質だけを問題にする。だれの言葉であろうと、どんな学位を持った人間の言葉であろうと、中身がすべて。それこそが時代の変化だ」

 一気にまくしたてたモーリツァス氏は、一息入れて「といって、僕もジャーナリズムの学位を持っているんだけど」。笑い声が上がった。話術もなかなかのものだ。

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 モーリツァス氏はイリノイ州シカゴ生まれ。母方の祖国である中米エルサルバドルで育ったが、内戦のため米国に戻り、陸軍に志願。その後、02年に政治ブログ「デイリー・コス」を開始した。「コス」とは、軍在籍時の呼び名に由来する。反戦・リベラル色を鮮明にし、時には民主党指導部に公然と反旗を翻す“ネットルーツ”の中核的存在にのし上がった。

 06年、コネティカット州上院選予備選で、民主党の重鎮だった現職のジョー・リーバーマン候補が、ネットルーツ的主張を掲げる無名候補、ネッド・ラモント氏にまさかの敗北を喫した事件(本選では無所属で出馬したリーバーマン候補が勝利)、同年のバージニア州上院選で、08年の共和党有力大統領候補と目されていたジョージ・アレン氏が、少数民族への卑称を漏らした場面がインターネットに流れ落選した事件など、まさかの政治的番狂わせには必ずかかわってきた。「ワシントンがもっとも恐れる男」とも評される。

 モーリツァス氏は祝勝会で、「オバマ氏の勝利は、時代が変化したことの直接的な反映だ」と、高らかに述べた。「ヒラリー・クリントン氏が代表していたカネや人脈、既存の政治組織を、草の根勢力が打ち破った記念碑的勝利だ」

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 だが党派的であることを隠さず、政治をゲーム感覚でとらえがちで、政策論にはほとんど興味を示さないネットルーツたちへの疑問も根強い。

 オバマ氏追撃が絶望的となりつつあった予備選終盤、クリントン氏はある非公開の集会でネットルーツたちを「活動家層」と呼び、「予備選では好調だった私たちが党員集会では負け続けた理由は、彼らが大挙して集会に押しかけ、個人での参加者を脅したからだ」と、不満をぶちまけた。

 祝勝会の会場では、「ジョン・マケイン候補は共和党内をまとめきれていない。民主党の方がむしろ結束に成功している」との意見もあがったが、党内での戦いである予備選より、本選ではさらに幅広い有権者からの支持が必要とされる。初めて本選を左右する存在にのし上がったネット世代の動向には、まだまだ未知数の部分が残っている。

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