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2008年06月17日(火) 11時51分

韓国・北朝鮮は漢字を捨てたのか?オーマイニュース

■総ハングル化が進む韓国・北朝鮮

 2002年、小泉総理大臣(当時)が電撃的に訪朝して、キム・ジョンイル国防委員長との間で、日朝ピョンヤン宣言が調印された。その時の署名映像を見て、ふっ、と思うものがあった。

 キム・ジョンイル氏が漢字の「金正日」ではなく、ハングルで署名していたからである。ついに北朝鮮では自己の名前まで、漢字を捨ててハングル化したのか、と。

 北朝鮮だけではない。韓国も同様だ。以前は新聞なども、ハングル・漢字混合文で書かれていて、日本人が見てもおよその意味が通じた。が、今は題字などを除き、ほとんど全面がハングルだ。

 ちなみに、韓国では2005年に国語基本法が公布され、「大韓民国の公用文書はハングルで書く。ただし、しばらくの間、必要とされる場合は漢字を併用できる」と規定された。
 こうしたハングル化と相まって1984年、韓国当局から日本側に、相互主義の観点から、人名・地名などの固有名詞を、現地音で読むように、との申し入れがあった。

 つまり、「金大中」を「きんだいちゅう」と、「釜山」を「ふざん」と、日本式に読んでいたものを、それぞれ「キム・デジュン」、「プサン」と現地音で読んでほしい、というわけである。

■NHKによる表記の変遷

 以下は、私がNHK視聴者コールセンターに、電子メールで2度にわたり問い合わせた結果を元に、この現地音読みに関するNHKの対応の経緯である。

 先述のように、1984年に韓国側から日本側に、現地音読み方式を取り入れるように、との申し入れがあり、日本側マスコミも順次それを取り入れていった。

 1993年、日本の教科書での外国地名の表記標準を示す『地名表記の手引き』が改訂され、「韓国・北朝鮮の地名について、それぞれの現地音読みの原則とする」(NHK視聴者コールセンターの回答文・ママ)と明記された。

 これを受け、NHKでは1994年4月より、韓国・北朝鮮の人名・地名については、全面的にこの現地音読み方式を取り入れた。

 そしてその後、2001年に見直しが行なわれ、「漢字を併記することが視聴者の理解を助けると判断される場合は、漢字をかっこ入りで併記する」という、ただし書きが付記され、現在に至っている。

 これは、新聞など活字メディアもほぼ同様の扱いである。たとえば「李明博」大統領ならば「イミョンパク」とルビをふるが、最初からほとんど漢字を使用していない、韓流スターの「ぺ・ヨンジュン」の場合は、そのままカナ表記だ。

 なお、「金大中事件」や「光州事件」などのように、事件当時、日本式に読んでいた場合は、今でもそれぞれ「きんだいちゅうじけん」、「こうしゅうじけん」と、当時の慣例通り読んでいる。

 また、日中間(韓中間も同様と思われるが)では、従来通り、お互いに自国式の漢字読みで通している。

■読み優先で、カタカナ表記にすればいい

 ここまでが事実の経緯である。ここからは少しばかり、私の意見を述べたい。

 ローマ字文化圏で形成されているヨーロッパでは、「カエサル」と「シーザー」、「ベネツィア」と「ベニス」のように、必ずしも現地音にこだわらず、それぞれの国、地方による独自の読み方で通している。

 そういう意味では、東アジアのわが漢字文化圏でも、漢字という共通の文字を、それぞれの国の読み方で通したとしても、別にかまわないと思うし、現にそうしてきた。

 しかしながら、日本は韓国当局の要請を受け入れ、現地音読み方式を取り入れた。相手方も日本の人名・地名を日本式に読んでいるということだから、相互主義の観点から受け入れざるを得ないのはわかる。

 問題は韓国・北朝鮮が完全に漢字を捨てたのか、という点である。というより、日本側で相変わらず、韓国・北朝鮮の人名・地名を漢字表記で併用している点だ。

 元々日本人は、漢字を音読み、訓読みしてきたが、これに加えて韓国・北朝鮮式の読み方を強要される、という点に私は少なからず抵抗を覚える。

 相手方は、漢字をハングル化し、その読み方も現地音読み方式を求めている。ならば日本側も、漢字文化圏以外の国々の固有名詞と同様、カタカナ1本で表記したらどうなのか。

 もっとも長年、人名も地名も漢字表記してきた馴染みもあり、一挙には無理だろうとは思う。が、いずれはそういう方向に進むべきではないか。漢字を捨てようという国に対し、いつまでも漢字で対応する必要はない。

(記者:斉喜 広一)

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