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2008年06月16日(月) 15時09分

元「スペクテイター」誌編集長はキャラ立ってます! ロンドン新市長は、英国で「一番賢くて面白い男」COURRiER Japon + hitomedia

イギリスの保守党からびっくりするような人間が現れた。クマのような風貌で、ジョニーウォーカーを愛飲しているようには思えないつるつるの頬、ぼさぼさの金髪。そんな男が「保守党に一票入れれば、奥さんが巨乳になりますよ」と訴えて、磐石と見られていた現職のケン・リビングストンを破り、ロンドン市長の座に就いたのだ。
彼の名はボリス・ジョンソン(43)。BBCの風刺番組に何度も出演しており、見事な切り返しや上流階級のアクセントで大真面目にかます冗談に皆が夢中になっている。ガーディアン紙の記者は、彼を「今の政治家のなかで一番賢くて面白い」としつつも、彼がロンドン市長になることで恐ろしい結果がもたらされるかもしれないと危惧している。
ボリスの祖先にはトルコ人、スイス人、ユダヤ人、フランス人などがいる。母親は画家、父親は世界銀行職員、後にヨーロッパ議会の保守党議員となった。インド人とのハーフの妻と、4人の子供がいる。
だが、重要なのはボリスが生粋のイギリス人だということ。陽気な保守主義者、王室の伝統的な価値の擁護者、狩猟の愛好家という人々と同類なのだ。ときに反動的であり、またときには驚くほど(とりわけ道徳に関して)開放的であり、経済的には自由主義者で、米国との同盟を重んじ、官僚支配を嫌い、EUが英国の問題に口を出すのを極端に嫌がる、そんなタイプである。そして何より、英国人気質の真骨頂とみなされる、ユーモア、才気、スタイルを重要視する。

人種差別発言も……

稀代の怠け者で秀才のボリスはイートン校(成績優秀なため、恐ろしく高い学費の半分は免除)を卒業後、オックスフォードで古典文学を専攻。学生組合のリーダーとして名を上げた。
タイムズ紙でジャーナリストとして働き始めるが、でっち上げの引用を記事にしたことが発覚し、即解雇。続いて勤めたデイリー・テレグラフ紙では、ブリュッセル特派員として、EUが発する、ソーセージのサイズやバナナの曲がり具合を定めたわけのわからない「指令」を大げさな皮肉と悪意でこき下ろし、保守党員に愛される記者となる。
その・実績・を買われて、1999年にはスペクテイター誌の編集長に上り詰めた。2年後には下院議員に選出され、保守党の影の内閣入りを果たした。家庭問題でその座を追われることになったものの、ロンドン市長候補としてほどなく中央からお呼びがかかったというわけだ。
ただしボリスの政治手法は、マーガレット・サッチャーやジョン・メージャーのそれとはまったく別物。彼はヘマや失言を繰り返してばかりいる。編集長時代には、福祉におんぶにだっこのリバプール市民たちのメンタリティを徹底的に嘲弄(ちようろう)する記事を掲載して痛い目にあっているし、アフリカ訪問中のブレアを揶揄(やゆ)するために、黒人を馬鹿にして「スイカの笑顔のアフリカ人」と書いて顰蹙(ひんしゅく)を買ったこともある。
彼はスタイルとして、大げさに悪者ぶっているだけなのだろうか。反動者かパフォーマンスだけのピエロなのか。小説家である姉のラシェルによれば、「ピエロになるのは、敵の不意を衝くための戦略で、チャーチルから学んだもの」だそうだ。

ル・モンド(フランス)より。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080616-00000000-cou-int