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2008年06月15日(日) 20時56分

【今週のおまとめニュース】なぜ…秋葉原通り魔 やりきれぬ事件の全貌産経新聞

 穏やかな日曜日、歩行者天国の秋葉原が一転、地獄のような惨劇の舞台となった。なぜ、やりきれぬ遺族や関係者の思いをよそに、逮捕された加藤智大容疑者からは身勝手な供述が次々と語られている。事件の初報からを振り返った。

【カメラが捉えた惨劇の現場】

 ■第一報「秋葉原で人が刺された」

 「秋葉原で人が刺されている」−。産経新聞社に飛び込んだ第1報は、平穏な休日に起きた大事件のほんの一端でしかなかった。騒然とする現場で、ほどなく男は逮捕されたが、その惨状が次々と明らかになっていく。
 目撃者の話によると、歩行者天国にトラックで突っ込んだ男は、奇声を発しながら、次々と通行人を襲っていった。一瞬にしてパニック状態に陥った秋葉原。その中で男は倒れた人に馬乗りになりながらナイフを振り下ろした。
 次々と通行人を刺し、路地に逃げ込んだ男は、「おとなしくしろ!」 警察官の言葉に、素直にナイフを落とし取り押さえられた。当初「暴力団員」を名乗っていた男は、自動車工場に勤務する加藤智大容疑者(25)と判明、「世の中がいやになった」と供述した。

 ■増える犠牲者…

 逮捕の間にも犠牲者は増え続けて、最終的に死者7人にのぼった。プログラマーを夢見ていた藤野和倫さんの父親は、突然の悲報に厳しい表情で病院へ。また、東京芸大4年の武藤舞さん(21)の自宅では、隣人らが驚きと悲しみの表情を見せた。
 この日の取調べで、加藤容疑者が別のナイフを隠し持っていたことや、派遣先の会社での仕事ぶりの一端も判明。そして、加藤容疑者が犯行前の様子をネットの掲示板に書き込んでいたことも明らかになった。

 ■「優秀な子供」の転落、屈折

 青森県有数の進学校を卒業した加藤容疑者。技術者を目指していたが、希望する職業には就けず、劣等感を募らせていた。調べの過程で、4月20日に携帯サイトへ犯行を思い立ったともとれる書き込みをしていたことが判明。事件の3日前には、職場で「作業着がない」と激高し、会社を休んでいた。
 加藤容疑者は福井で殺傷力の強いタガーナイフを購入。そして、「身辺整理」なのか、友人を訪ね、ゲーム機やソフトを渡していた。
 当日、犯行直前に秋葉原からもサイトに書き込みをしていた加藤容疑者は、その後、車で歩行者天国に突入。3人をはねて殺害し、4人を刺殺した。
 犠牲者の告別式で、家族や友人が悲しみを新たにするなか、加藤容疑者の両親も記者会見した。母親はショックのあまり地面に倒れこむ場面もあった。

 ■オタクの聖地に衝撃

 電気街からサブカル、オタクの聖地へと変貌した秋葉原で起きた事件。千代田区は歩行者天国の一時中止を決定。現場に設けられた献花台には多くの花が手向けられた。“聖地”を歩く加藤容疑者と同じ25歳の人たちも「なぜここまで悲観的にならなければいけなかったのか」と、その供述に首をひねった。政府も凶器となったナイフ規制の検討に乗り出すなど、波紋は広がり続けている。

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