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2008年06月15日(日) 12時30分

過熱する『うば捨て山』論争 ブログの声は産経新聞

 民主党など野党が出した福田康夫首相への問責決議案が参院で初めて可決され、消化試合モードに入っていた終盤国会のイベントが1つ増えた。しかし、政府・与党は「単なる最後っぺ」にしか受け止めていない。もちろん、首相は総辞職などしないし、衆院解散・総選挙も見送る考えで、北海道洞爺湖サミットやお盆休みなどをはさみ、国会での与野党攻防は2〜3カ月の間、お預けとなる公算だ。

 もっとも、4月に導入された後期高齢者医療制度は、高齢者を中心に国民の強い反発を買った。与党側は衆院山口2区補選や沖縄県議選で惨敗し、現実に手痛いダメージを受けた。

 あわてた与党は、制度の凍結にも等しいような「改善策」作りに腐心した。しかし「年寄りを切り捨てるのか」という感情的な反発を静めることができたのかどうかは不透明だ。

 NHKのホームページには「解説委員室ブログ」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/)のコーナーが開設され、各担当者の投稿という形で、番組での発言内容がアップされている。放送局における署名記事のようなものだ。

 「ニュース解説『高齢者医療 政治の責任』」(5月23日)では、影山日出夫解説委員が「与野党とも高齢者の怒りを買えば選挙に負ける」と、この問題が争点化している背景をズバリ指摘している。

 「廃止論や負担軽減策をめぐる論議ばかり先行して、高齢者の医療費を誰がどう負担するのか。その議論が少ない」と与野党双方の姿勢を批判。「高齢者の医療費をばっさり削ることが本当のねらいではないか」との疑問もぶつけている。

 NHKだけに、公共性や中立性をとりわけ求められる立場だろうが、メリハリを効かせ、問題点がよく整理されていて、一見の価値ありだ。

 政治系ブログとはまったく異なる大和総研のコラムでも、後期高齢者医療制度をずばり「破綻救済が目的!」(http://www.dir.co.jp/publicity/column/080529.html)と題して取り上げている。筆者は同総研公共政策研究所の斎藤哲史氏。

 「わが国の医療保険は、1年ごとに更新を行う短期保険(単年度会計)のようなもので、老後に備える財政設計になっていない」と、保険料を将来のために引き当てる構造になっていなかったことをまず指摘する。しかし、実際には「自分たちは保険料を長年払ってきたのに、無効にされてしまった」と、高齢者が受け止めていることが問題の背景にあると解説する。

 新制度の趣旨は「実質破綻している」高齢者の医療保険の債務超過状態を明確化し、税金と全国民の保険料で穴埋めする救済スキームだと語り、野党が主張する「うば捨て山」とは正反対だと言い切っている。

 「政権与党として、過去の失敗を認めたくないのは理解できなくもないが、国鉄や銀行の不良債権処理のように、事実を認めたほうが建設的な議論が進められるといえよう」と結んでいるが、民主党も問責など出さず、小沢一郎代表が党首討論でこう訴えた方が、パンチがあっただろうに。

 「世に倦む日日」(http://critic3.exblog.jp/)では、「ガソリン国会の終幕と欺瞞」と題し、民主党の戦略を早くから批判してきた。

 民主党が揮発油(ガソリン)税の暫定税率問題で政府・自民党を追及するのをやめ、後期高齢者医療制度にシフトしたのは「事実上の陣地放棄であり、戦略の失敗の路程」と指摘し、1月から続けられた「ガソリン国会」の騒ぎは「医療問題と格差問題を国民の前から消すための芝居の政治」と断定している。

 日本の二大政党制は「擬似的」なものであり、「派閥のボスの権力の奪い合い」に過ぎないと結論付けている。

 内閣支持率が低迷する福田首相も、問責決議に対抗する内閣信任案可決で、当面は与党に支えてもらえる形となった。民主党の小沢体制も9月の代表選をはさんで続く雲行きだ。たしかになれ合いの構図が浮かび上がってくる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080615-00000918-san-pol