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2008年06月15日(日) 02時13分

突然なぜ、泣き崩れる家族…捜索再開に望み読売新聞

 震度6強の激しい揺れがのどかな山間地の地形を一変させた——。

 14日午前、週末の東北地方を襲った岩手・宮城内陸地震。断続的な余震に、土砂崩れ現場の救出作業は難航を余儀なくされ、祈るように見守った家族は無情な結果に泣き崩れた。

 押しつぶされた温泉旅館に取り残された7人の安否は不明のまま。夜明けとともに再開される捜索に望みをつないだ。 高さ約120メートルの山が崩落した宮城県栗原市内の工事現場。土砂の中から午後7時過ぎ、五十嵐正巳さん(54)(山形県鮭川村)と門脇義富さん(53)(同)が発見され、その後死亡が確認された。

 五十嵐さんらは山の頂上部分に登り、崩壊防止のネットを張るため、約110メートルの高さでロープにつられた状態で作業をしていた。地震が発生すると、斜面は生い茂る樹木ごと崩落。作業員3人が巻き込まれた。

 レスキュー隊など数十人が捜索したが、数分おきに「ゴゴゴゴ」という地鳴りとともに余震が起きる。小石が斜面を転がり落ち、捜索は難航。生き埋めになった作業員の親族らは、ぐったりとしゃがみ込みながら見守り、時折、肩を抱いて慰め合った。捜索は五十嵐さんと門脇さんが運び出された後、1人が行方不明のまま打ち切られた。

 五十嵐さんの親類の女性は「農業と勤めを両立していて、昔から働き者だった。こんな災害に巻き込まれ気の毒」と肩を落とした。 胆沢ダム(岩手県奥州市)の工事現場では、岩手県滝沢村大釜、作業員千葉正彦さん(48)が落石に遭い、搬送先の病院で死亡した。自宅で留守番をしていた親族の女性(18)は「信じられない」と泣き崩れ、「小さいころにはトランプやオセロで一緒によく遊んでくれた。いつも笑顔の絶えない人でした」と声を絞り出した。

 福島県いわき市勿来町の会社員石井道隆さん(55)は、釣り仲間と磯釣りを楽しもうとしていて、地震による土砂崩れに巻き込まれて亡くなった。妻の初枝さん(55)は「登山やゴルフもして、たくましくて、不死身と思えるほどの人でした。15日の父の日には、2人の娘とゴルフウエアをプレゼントしようと考えていたのに」と声を詰まらせた。

 岩手県一関市東山町、千葉友三さん(60)は、地震に驚いて道路に飛び出し、トラックにはねられ死亡した。同市内で金型の会社を経営し、地域の運動会などにも参加するスポーツマンだった。妻の和子さん(59)は「夫婦で人間ドックを受ける予約もしていた。まさかこんなことになるなんて……」と涙ながらに話した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080615-OYT1T00016.htm