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2008年06月14日(土) 14時18分

消費者庁30法令所管 福田首相の執念、自民崩せる?産経新聞

 政府の消費者行政推進会議(座長・佐々木毅前東大総長)は13日、福田康夫首相が来年度の創設を表明している消費者庁の具体像を示した報告書を決定し、首相に提出した。消費者庁は他省庁からの移管や共同所管(共管)を含め、30法令を所管する。

消費者庁のイメージはこんな感じ

 報告書は、消費者庁を内閣府の外局とし、消費者行政担当相を常設。「消費者行政全般の司令塔」として位置づけ、他省庁や業者への強い勧告権を持たせる。消費者からの苦情相談窓口を一元的に担い、悪徳業者などから違法収益剥奪(はくだつ)といった被害者救済の新法制定も検討する。

 報告書を受け、政府は基本計画を今月中に策定し、経済財政改革の基本方針(骨太の方針2008)に反映させる。さらに消費者庁設置法案を秋に想定される臨時国会に提出し、成立を目指す。

 消費者庁の具体像を示した消費者行政推進会議の報告書が決定し、政府は月内に報告書に沿った基本計画を閣議決定するが、今後の焦点は、これまで消費者問題への関心が薄かった自民党の手続きに移る。福田康夫首相の「執念」(霞が関関係者)でまとめられた消費者庁に、党内では族議員の圧力や、規制強化による「コンプライアンス不況」への懸念がくすぶっており、福田内閣の課題はなおも山積している。

 ■安全委めぐり攻防

 首相は13日夜、首相官邸で記者団に対し「よい役所を作るためには、具体的な制度(作り)の問題もある。これからも一生懸命やらなければいけない」と述べ、制度設計作業を加速させる考えを示した。

 首相の意欲とは対照的に、自民党での消費者問題の位置づけは「最も縁遠い分野」(中堅)とされる。

 同党は生産者団体を有力な支援組織としてきた。消費者問題調査会(会長・野田聖子元郵政相)の出席議員は数人だけの時もあって、「霞が関を代弁して『そんな話は聞いていない』という議員が必ず出てきて抵抗する」(調査会幹部)の声があがっている。

 今回の報告では、食品の安全性を検証する内閣府所管の食品安全委員会の扱いは、「引き続き検討」と結論を先送りしたが、そこには首相と党側の「対立」があった。

 今週に入り、谷津義男元農水相ら農水関係議員が町村信孝官房長官に電話で「リスク評価(安全委)とリスク管理(消費者庁)を一緒にすべきではない」と申し入れた。町村氏は「検討する」と一度は答えたものの、その後「首相はいろいろなものをできるだけ消費者庁に入れた方がよいという考えだ」として、首相が安全委の消費者庁入りを強く希望していることをにじませた。

 ■「上げ潮派」も…

 さらに混迷の要因になりそうなのが、経済成長を重視し、改革派を自称する「上げ潮派」の存在だ。そのブレーン的な存在の竹中平蔵慶応大教授(元総務相)は「消費者保護の名の下に過度の規制を行い、経済を萎縮(いしゅく)させることがあってはならない」との持論を展開しており、同調する自民党議員が抵抗勢力に転化する可能性もある。

 ■消費者行政推進会議 報告書要旨

 政府の消費者行政推進会議の報告書要旨は次の通り。
 一、内閣府外局として消費者庁を設置。強力な総合調整権限、勧告権、企画立案機能を付与。消費者行政担当相を置く。
 一、消費者からの苦情相談受け付けから法執行に至る対応を規定した新法の成立に向けて取り組む。新法で国と自治体が、国民生活センター、消費生活センターに一元的な相談窓口を設置することを規定する。
 一、(国が被害者の代わりに損害賠償請求できる)父権訴訟、違法収益剥奪(はくだつ)も視野に入れつつ、被害者救済のための法的措置の検討を進める。
 一、消費者庁は法律に基づく緊急時の物価対策や公共料金など物価関係法令を所管する。物価の安定は消費者の利益の擁護、増進のために不可欠な条件。また消費者や生活者が主役となる社会を構築にかかわる法律を幅広く所管する。
 一、「表示」に関する法律として景品表示法、日本農林規格(JAS)法、食品衛生法、健康増進法、家庭用品品質表示法、住宅品質確保法を移管、共同所管(共管)する。
 一、「取引」に関する法律として消費者契約法、無限連鎖講防止法、特定商品預託法、電子消費者契約法、特定商取引法、特定電子メール法、金融商品販売法、出資法、貸金業法、割賦販売法、宅地建物取引業法、旅行業法を移管、共管する。
 一、「安全」に関する法律として製造物責任法、食品安全基本法、消費生活用製品安全法、食品衛生法、有害物質含有家庭用品規制法を移管、共管する。
 一、「生活・物価」に関する法律として消費者基本法、国民生活センター法、個人情報保護法、公益通報者保護法、特定非営利活動促進法、国民生活安定緊急措置法、買い占め及び売り惜しみ防止法、物価統制令を内閣府から移管する。
 一、運営に消費者の意見が直接届く仕組みとして、有識者からなる消費者政策委員会を設置し、意見具申を行う。

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