記事登録
2008年06月14日(土) 22時51分

いきなり山崩れ、バスが急斜面横転…乗客ら被災の瞬間証言読売新聞

 「バスは土砂に押し流され、急斜面を横転して滑り落ちた」。岩手県奥州市で土砂崩れに直撃されたバスの乗客は、間一髪で助かった時の様子を生々しく語った。

 奥州市や金ヶ崎町などの住民らで作る「胆沢ダム水資源のブナ原生林を守る会」のメンバー19人と運転手の計20人が乗った貸し切りバスは、奥州市胆沢区の石淵ダム近くで土砂に押され、道路下にずり落ちた。メンバーらは自然観察会のため媚(こび)山に向かう途中で、14日午後に全員が救助されたが、県警によると、うち8人が重軽傷を負った。

 奥州市水沢区の税理士蜂谷義昭さん(74)は、「山の反対側は急斜面だった。バスが土砂に押しつぶされそうになり、車内はパニック状態になった。頭を隠そうと、みんな座席に座ったまま前かがみになった」と恐怖感さめやらぬ様子。車内の誰かが「落ち着け」と叫び、女性から車外に脱出したという。

 蜂谷さんら数人が山側の窓からはい出した後、バスはバランスを崩し、急斜面で一度横転して滑落。斜面に生えていた3本の木に引っかかってようやく止まり、閉じ込められた乗客は、助け合って外に出た。運転手が近くの宿泊施設に駆け込み、119番通報。蜂谷さんにはけがはなく、ほかの乗客らと自衛隊のヘリで県立水沢高校まで運ばれた。

 メンバーの一人で主婦の及川妙子さん(72)によると、地震が起きた時に走っていたのは、マイクロバスが1台通れるくらいの細い道で、ガードレールもなかった。「突然、運転手が『あーっ』と叫び、車内に『地震だ』と声が響いた。怖くなって耳を押さえてうずくまった」と及川さんは、その瞬間を振り返った。

 別の女性(69)も「いきなり山が崩れ、バスはガンガンと揺れて止まった。運転手から『荷物は後で出す。早く降りて』と促されてバスから脱出した」と青ざめた表情で語った。(盛岡支局 山田正敏)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080614-OYT1T00721.htm