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2008年06月14日(土) 13時10分

新幹線急停車…乗客騒然、停電は2万戸超す読売新聞

 静かな土曜の朝を突然、激しい揺れが襲った——。

 宮城県栗原市と岩手県奥州市で震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震。大規模な土砂崩れや停電、水道管の破裂が各地で相次ぎ、商店の看板が落ちて砕け散り、寺院では仏像や位牌(いはい)が倒れた。

 ◆新幹線車内

 盛岡発東京行き東北新幹線やまびこ44号は、福島県内を走行中、突然減速し、車内は一時騒然となった。

 乗客の男性会社員(47)によると、「停電のため急停車します。近くの座席などにおつかまりください」と車内放送が流れた。止まるまで約1分。「宮城北部で震度7程度の大きな地震が起きた模様です」と放送されると車内からどよめきが上がった。

 乗客は携帯電話を持ってデッキに駆け出し、「大丈夫だ」「けがはないか」とあわてた様子で話していた。約30分後、電車はゆっくりと動き始め、郡山駅まで移動した。

 ◆JR仙台駅

 駅構内では、公衆電話の前に長い列が出来、新幹線の復旧の見通しについて、駅員に詰め寄る乗客もいた。家族で東京に旅行に行く予定だった宮城県名取市の女性(45)は「一瞬、何が起きたのか分からなかった。ホーム全体が横揺れしたようで、ガタガタという音がすごかった。周囲の人たちは頭を抱えるようにして地面にしゃがみ込んでいた」と不安そうに話していた。揺れが収まると、みんな一斉に携帯電話を取り出し、家族などの安否を確認していたという。

 ◆ホテル

 岩手県奥州市衣川区の国民宿舎「サンホテル衣川荘」では、エレベーターが停止し、床などにひびが入った。約15人の宿泊客にけがはなかったが、千葉正義副支配人(52)は、「2分ほど激しい縦揺れが続き、体がけいれんしているようだった。立っていられる状況ではなかった」と話していた。

 また、同市江刺区のホテルの女性従業員(45)は、ホテルの駐車場で激しい揺れに襲われた。「車が勝手に動き出すのではないかと思うほどの激しい揺れだった」と興奮した様子で話していた。

 宮城県栗原市で「ホテルエポカ」を運営する佐々木大佑さん(25)によると、大きな縦揺れが10秒以上続き、ホテル内の電源が落ちて自家発電に切り替わった。建物に被害はなく、宿泊客4人にけがはなかったが、調理室の冷蔵庫のガラスが割れて辺りに散乱。ホテルの外は、見える範囲の電柱のほとんどが傾いているという。

 ◆商 店

 岩手県北上市のデパート「さくら野北上店」では、食料品売り場でしょうゆ瓶などが棚から落ちて割れたほか、エレベーターが緊急停止した。出勤途中だった阿部信二・管理マネジャーは、「走っている車でも気づくほどの大きな揺れで、古い商店では、看板が落ちて地面で砕けていた」と不安そうに話していた。

 同店では午前10時の開店前だったため人的被害はなかった。

 秋田県湯沢市表町の商店では、地震発生の数分後、1階と2階のモルタル製壁の一部が歩道に崩れた。

 店内の棚から落ちた瓶などを片づけていた肉店経営高橋由美子さん(43)は「ドドドドッとすごい音がして、壁が崩れ落ちてきた」と驚いていた。

 店は、JR湯沢駅前にあり、車の通りが多い国道13号沿い。高橋さんは「こんなに揺れたことがないので驚いた。歩いている人がいなくてよかった」と、ほっとした様子で話していた。

 平泉町の毛越寺も激しい揺れに襲われた。藤里明久執事長によると、建物は倒れていないが、仏像などが倒れ、内部はめちゃくちゃ。「ドーンと来る感じで、経験したことのない激しい揺れだった。宝物館の仏像が倒れ、位牌堂の中の位牌がほとんど倒れてしまった」と話し、寺の文化財の被害状況の確認に追われていた。

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 東北電力によると、地震発生直後の午前9時時点で宮城、岩手両県の計約2万9000戸が停電した。宮城で約2万6000戸、岩手で約2600戸という。同社は復旧を急いでおり、午前10時現在、停電は約2万2000戸に減っているという。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080614-OYT1T00364.htm