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2008年06月13日(金) 12時07分

参議院・首相問責決議初可決、直近の民意が無視されてよいのか?オーマイニュース

 現行憲法下で初めて、参議院の首相に対する問責決議が可決された。つまり目下、国権の最高機関を構成する責任がある議院のひとつが、正式に首相の責任を問い詰めているところだ。

 衆議院の内閣不信任決議とは異なり、参議院の首相問責決議は、たとえ可決されても法的拘束力がない。それは、参議院には解散がないこと、首相の指名は衆議院の議決が国会の議決になることの裏返しで、ゆえに参議院の解散はできない相談だし、参議院には首相をはじめ内閣を不信任とする機能がないという理屈になる。

 しかし、小泉元首相は、かつて郵政民営化法案が参議院で否決されたのを受け、直ちに衆議院を解散したことがあった。あのとき「参議院が衆議院と異なる議決をした。だから国民に信を問いたい」と、小泉元首相は伝家の宝刀を抜いた。その結果、衆議院では与党が圧倒的多数を獲得することにつながった。

 その前例を踏まえれば、いくらほぼ同時に衆議院で内閣信任決議を可決したとは言え、衆参の判断が異なる以上、ここは国民に信を問うという流れにならないのでは、やはり整合性がとれない。ましてや、直近の民意は昨年の参議院選挙に反映されているのであり、衆議院の民意は、それよりもひと区切り古い。

 6月初めに行われたある世論調査によれば、「参議院の首相問責決議は衆議院の内閣不信任決議とは違って法的拘束力はないが、もし可決された場合、福田首相はどう対応すべきか?」との質問に対し、衆議院を解散すべきと答えた人の割合が40%、内閣総辞職をすべきと答えた人の割合が28%だった。それに対し、衆院解散も内閣総辞職も不要と答えた人の割合は27%に過ぎなかった。つまり、68%と約7割の世論が首相に何らかの対応を迫っている。これは、衆議院の法案再可決成立要件である3分の2(66.67%)賛成の規定よりも大きな値だ。

 福田首相は、「犠牲者は私のほうですよ」と失言とも受け取れる発言をした。そして、「お白州で(神妙に)聞いていた」「(問責を)一つひとつ重く受け止める」としながらも、「(衆議院の解散は)今、考えていない」と、このまま問責決議を黙殺する構えを見せている。

 確かに、参議院の首相問責決議には法的拘束力がない。しかし、直近の民意を反映した議院が首相に問責を突き付けた事実を軽んじてはならないはずだ。

 あらためて辞典を繰ってみると、「問責」とは「問い責めること」であり、特に「責任を問い詰めること」だと書いてある。責任を問い詰められた側は、問い詰められたなりに、しっかりと何らかの回答をする義務があると考えるのが筋というものだ。

 「会期末ゆえ、セレモニー的に(問責決議を)出して(通して)おこうということなら何をか言わんやだ」

と発言したのは自民党・尾辻参院議員会長だ。いかなる可決も民意の反映であることの厳粛性を、自分勝手にお忘れ——では困ったものである。

(記者:中井 伸二)

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