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2008年06月13日(金) 11時58分

アイドル・岡田有希子さんの自殺原因にこだわる男産経新聞

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件が社会を震撼(しんかん)させて間もない12日、インターネット掲示板に無差別殺人の予告を書き込んだとして、威力業務妨害の罪に問われた男性被告(42)の初公判を東京地裁で傍聴した。

 起訴状によると、被告は平成20年4月11日午後3時10分ごろ、秋田県能代市の携帯電話販売店で、お試し用の携帯電話を使い、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に「○○(女優の名前)が謝罪会見を開かなければ、東京都新宿区の小学校に通う児童を無差別に殺害する」という内容のことを書き込み、小学校に通う児童に集団下校を余儀なくさせた。罪状認否で被告は起訴事実を認めた。

 メガネをかけた被告は半袖のポロシャツに黒のパンツ姿。被告人質問の受け答えはしっかりしていた。

 検察側の冒頭陳述などによると、被告は昭和61年に自殺したアイドル歌手、岡田有希子さんのファンで、2ちゃんねるに「自殺の原因は○○にあるから謝罪会見を開け」という内容の書き込みをしていた。だが、この見方に誰も賛同しなかった。そこで、学校の安全を守ることに社会の関心が高まっていることを逆手にとり、「子供を殺す」と書き込めば、大騒ぎになり、○○を謝罪会見に追い込めると考え、犯行に及んだ。

 弁護人「今でも○○が岡田有希子を殺したと信じている?」
 被告「その当時は2ちゃんねるの世界にはまっていたので、いささか持論に偏った。今思えば妄想じみたこと」
 弁護人「そうじゃなくて、○○が岡田有希子を殺したと信じていますかと聞いている」
 被告「半信半疑なものがある」
 弁護人「信じていない?」
 被告「要因の一つで、直接の原因とは思っていない。精神状態を悪化させたのは事実ではないかと思う」
 2ちゃんねるに書き込んでいた心境を被告は吐露した。
 弁護人「2ちゃんねるにはまるのは自由に話せるのがその場だけだったから?」
 被告「それもありますし、いろいろな自分を演じられ、いろいろな持論を展開できるのが魅力でした」
 一方、検察官は再犯の恐れをただした。
 検察官「『岡田有希子が自殺したのは○○が要因の一つ』と言ったが、それを○○のファンに分からせたい?」
 被告「ないといえばうそになるが、今後そんなことはしない」
 検察官「最初は普通のやりとりだったけどエスカレートした。またエスカレートしないか」
 被告「2カ月勾留された今振り返れば、あのときは平常心じゃなかった。心がけとしては2度としない」
 検察官「友人や相談できる人はいなかった?」
 被告「いないこともないが、私の年齢で幼稚な遊びをしていることに羞恥(しゅうち)心があり、周囲に言えなかった」
 裁判官は被告の持論の根拠に切り込んだ。
 裁判官「岡田有希子が自殺したのは○○が原因と考えた根拠は?」
 被告「岡田有希子が自殺する数日前、コンサートを控えて多忙なのに、○○に呼び出されて、鬱病(うつびょう)がテーマの映画を見せられた。それが最も重要な点です」
 裁判官「どういうことから知った?」
 被告「ネット、当時の雑誌、インタビューをヤフーオークションで集めて、総合して判断した」
 しかし、なぜ被告は亡くなった岡田有希子さんに平常心を失うまで傾倒していたのだろう。答えは弁護側の最終弁論にあった。
 弁護人「被告は自分が幼いころいじめを受け、20歳のときに自殺未遂をした。その自分と、岡田有希子を重ね合わせていた」
 検察側は「自己の妄信を分からせようと、実在する児童を殺害すると予告した犯行態様は悪質」として懲役2年を求刑した。
 判決は6月23日に言い渡される。(末崎光喜)

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