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2008年06月12日(木) 11時41分

役所が住民との約束を守らないのはどうして?オーマイニュース

 JR川崎駅から京浜急行に乗り、八丁畷(はっちょうなわて)駅でJR南武線に乗り換え、川崎新町駅で降りると、新しく統合された県立川崎高校がある。

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 ここから徒歩で30分ほどの所に統合前の旧県立川崎南高校があり、この高校を約束通り、地域に開放するか、あるいは解体し商業施設にするかで県、市と住民が抗争を繰り広げている。

 これからの地域再開発は福祉施設か、商業施設か──。何か勉強になりそうなので、現場を訪ねて見た。

 たくさんのアピール文をカメラに撮っていたら、年配の男性が笑顔で近づいてきた。「取材ですか」と聞いてきたので、取材目的を告げると

 「それは違う。私たちは約束を守れと言っているのです」

と言う。話を聞くと「訴訟を支える会」の千葉さんだと言う。

 問題の発端は、川崎高校統合の話が出た時に、県は、

 「川崎南高校を福祉施設とか老人ホームなどで使用する」

と地域住民には約束していた。しかし、実際には住民の知らない間に用途変更がされて、市とURが組んでショッピングセンター、ゲームセンターなど商業施設にする青写真ができていた。

 これには地域住民も驚いたようだ。この高校は建てて28年、まだそのまま使える。当初の約束通り地域に開放すればムダはしなくてすむ。また地域住民もこの高校には何かにつけ寄付もしてきた。解体はそうした善意をも葬り去ることになる、と残念がる。

 千葉さんの話では、県や市は商業施設にするには解体しなければならないというが、その理由として、土壌汚染、アスベスト問題、防犯などをあげてきた。よくわからない理由である。

 そこで裁判になり、裁判長は県に壊す理由を説明するように求めたものの、県の説明は的はずれでチンプンカンプンだったため、6月9日、横浜地裁で「壊す理由がはっきりしない」として「具体的に本当のこと」を7月28日までに説明するように要望した。

 一方、県側は、解体工事に着手しようとした時に、地域住民が工事を妨害したとして、住民を訴えた。実際に現場にいなかった人まで訴状に載っていると住民はあきれている。

 当事者である神奈川県知事の松沢成文さんは5月1日の記者会見で、「県は使用用途がないので解体する」、「住民には何度も説明した。もう開かない」、「川崎市とURが跡地開発をするので建物を除去する」と言ったそうだ。

 これに対して住民側は、「県民や市民の意見は一切聞いていない」、「住民説明会は1回開いたきりだ」と反論する。役所と住民はこじれきっているようだ。裁判ざたになれば仕方ないことか。

 「これからの地域開発は福祉か、商業施設か」で論争できるのかと思ったが、「落としどころは?」と千葉さんに聞くと

 「約束を守って、地域住民への全面開放です」

ときっぱり言い切った。

 計画では、市はURと組んで商業施設を造るというが、近くのJR川崎駅にはラゾーナ川崎プラザが盛況を呈している。

 同じものを造って競争できるのか少々疑問である。

 地域開発では役所と地域住民の基本的考え方が違う場合が多い。残念なことであるが、「役所が住民との約束を守らない」と言うことはどういうことなのか。それぞれの利権で動いている輩(やから)がいるのだろうか。

(記者:矢本 真人)

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