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2008年06月12日(木) 15時56分

無差別殺傷 加藤容疑者 「犯行よく覚えていない」 極度の興奮、記憶断片的産経新聞

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で、殺人未遂の現行犯で逮捕された派遣社員、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)が警視庁万世橋署捜査本部の調べに、逮捕時「署まで連行されたのは覚えている」とする一方、被害者を次々と刺した犯行について「よく覚えていない」などと話していることが12日、分かった。極度の興奮状態で記憶が断片的になっており、捜査本部は目撃者を集め事情を聴くなどして被害状況の裏付けを慎重に進めている。

 また、負傷者10人のうち2人はトラックにはねられ、8人は殺傷能力の高いダガーナイフで刺されていたことが新たに判明。死者7人については、3人がトラックにはねられ、4人が刺されたとみられることがすでに分かっている。

 調べに対し、加藤容疑者は「人を殺すために秋葉原へ来た。世の中が嫌になった。誰でもよかった」と供述。その上で「やったことは分かっている。事実は隠さないで話す」と述べている。

 しかし、トラックに乗って赤信号で歩行者天国との交差点に進入し、大学生の藤野和倫さん(19)らをはねた時点の記憶はあるが、トラックを降りて最初に刺した1人の服装は覚えていないという。

 続いて万世橋署交通課の警部補(53)を刺したとみられるが「制服の人を刺した後は、男女構わず刺した」「よく覚えていない」などと供述。このため取調官が現場の状況を示しながら刺された人の数を伝えると、「そのぐらいは刺したのは間違いない」と語り、記憶をたどっているという。

 加藤容疑者は当時の精神状態について「頭の中が真っ白になっていた」と説明。夢中だったという趣旨の供述もしている。

 加藤容疑者はこの後、ナイフを持って別の万世橋署員と対峙(たいじ)。警棒で殴られながらも痛みを感じる様子もなく、抵抗していた。署員は警棒でナイフを振り払おうとしたが、加藤容疑者が手放さないため、拳銃を向けて「武器を捨てろ」と言うと、やっとナイフを捨てた。

 加藤容疑者は万世橋署員2人と、たまたま居合わせた蔵前署員に取り押さえられたが、この際のことと万世橋署に連行されたときのことは「覚えている」としている。

 現場は混乱状態で、死傷した17人がどの場所で被害に遭ったかも明確には確認できない状態。捜査本部は「犯行状況の裏付けが急務」として経緯の解明に全力を挙げている。

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 ■冷たい雨のなか 武藤さんら葬儀

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で犠牲になった東京芸大4年、武藤舞さん(21)の葬儀が12日、東京都台東区の寛永寺輪王殿でしめやかに営まれた。冷たい雨が降るなか、会場に入りきれない参列者のために張られた雨よけのテントは沈痛な表情の参列者であふれ、舞さんの誰からも愛される人柄をしのばせた。

 参列者によると、葬儀では東京芸大の舞さんの友人らが舞さんの好きだったビートルズの「ヘイ・ジュード」などを演奏。舞さんの両親は参列者を気づかうなど終始、気丈に振る舞っていたが、出棺時には涙をこぼしていたという。

 この日は埼玉県蕨市の会社員、宮本直樹さん(31)の葬儀もさいたま市で営まれ、参列した親戚(しんせき)の男性(33)は「日に日に犯人への憤りが増してきています」と怒りを押し殺すように話した。

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 ■ダガーナイフ 所持禁止検討

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件を受け、警察庁は12日、犯行に使われたダガーナイフなど殺傷力の高い刃物について所持を禁止する方向で検討を始めた。また、現状ではナイフの購入に関する規制もほとんどないことから、販売業者と連携し、購入時に身分証の提示などを求めて身分確認する方針。自主規制を促すのか、法規制にするかは今後、検討していくという。

 現行の銃刀法は、刃渡り6センチ以上の刃物は正当な理由なく持ち運びできないと規定。所持については、15センチ以上の刀剣や飛び出しナイフなどを許可なく所持することを禁止していた。

 新たに規制を検討しているのはダガーナイフのように殺傷力が高く、日常生活ではあまり使われないと考えられる刃物。実際にどのような使われ方がされているかを調査し、社会的に必要とされているかを判断、銃刀法の改正作業に入る。

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