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2008年06月12日(木) 08時01分

秋葉原無差別殺傷 25歳どう見る 「共感できない」産経新聞

 ■感情押し込める世代/心の闇に「なぜ?」/ネット書き込み冷静

 アキバ好きの一方、「勝ち組」に反感を持っていた加藤智大容疑者は、神戸連続児童殺傷事件の少年と同い年の「酒鬼薔薇世代」に属する。秋葉原を歩く同じ25歳は事件をどう見ているのか。11日、アキバにいた男女に話を聞いた。

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 「私たちの世代は小さいころからテレビゲームで遊んでいた。だからコミュニケーション下手ではあるだろう」。フリーターの朝霞琉架(るか)さんは、自分たちの世代をそう話す。

 容疑者が書き込んだとみられる携帯サイトは孤独感に満ち、コミュニケーション下手だったようだ。「寂しかったんでしょうね。かわいそうだとは思うけど共感はできない」。サイトの書き込みを読んだ朝霞さんの感想だ。

 容疑者の“心の闇”を物語る書き込みに共感している人は、ほとんどいなかった。「なぜここまで悲観的になるのか、全然理解できない」。秋葉原で飲食店を経営する女性は首をかしげる。

 インターネットを身近に感じて育った世代だが、ネットの世界に救いを求めた容疑者と対照的にネットに冷静な声が相次いだ。「ネットの書き込みは、書けば書くほど視野が狭くなる」(女性)「ネットの掲示板は顔が見えないことをいいことに、ふざけて書き込みをする人もいるから信用しない」(男子大学生) 

 容疑者は派遣社員である自分を「負け組」と呼び、「勝ち組」に敵意をむき出しにした。格差社会が背景にあるとも指摘されるが、同じ25歳は、この見方に懐疑的だ。

 「今は売り手市場だから選ばなければ職はある。容疑者は自尊心と現状のギャップに苦しんでいただけ」。朝霞さんは、一部のマスコミや専門家が無理に社会性を持たせようとしているのでは、と疑問を投げかけた。

 容疑者はネットに毎日の不満を書き込んだ末に暴発した。秋葉原で働く美容師、藤野雄也さんは、自分たちを「身近な暴力が排除され始めた世代」という。

 「親や教師はいじめを恐れ、言い争いさえ許さなかった。僕らの世代は感情を押し込める傾向が強い。容疑者は不満をどうしたらいいのかわからず自暴自棄になったのではないか」

 一方で、容疑者の心理に理解を示す意見も。大学中退の経験がある女性会社員は「そのころはいい子でいることに疲れ、自暴自棄になっていた。容疑者の気持ちも分かる」と話した。

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 ■「酒鬼薔薇」と同学年 「理由なき犯罪」世代

 加藤智大容疑者ら現在の25歳は、平成9年の神戸連続児童殺傷事件で逮捕された少年や12年の西鉄高速バス乗っ取り事件の少年と同学年。世紀末(2000年)を多感な17歳で迎え、同年にはバス乗っ取り以外にも同年代の凶悪犯罪が全国で相次いだ。動機の不可解さから「理由なき犯罪世代」と言われた。

 加藤容疑者らの学年が生まれたのは昭和57、58年。ファミリーコンピュータが発売(58年)されたこともあり、テレビゲームとともに歩んできた世代ともいえる。

 援助交際が社会問題となったころに中学校に入学。まもなく同学年の少年が14歳で一連の神戸事件を起こした。

 事件の衝撃と警察や社会を挑発する犯行声明の異質性が、その後続発する「17歳の凶行」に大きな影響を与えた、と当時の専門家は分析した。

 愛知県豊川市では少年が主婦を刺殺、「人を殺してみたかった」と供述。バスを乗っ取った少年は「ネットで殺人や死体の画面をみて、やってみたい気持ちになった」が動機とされる。「学級崩壊」という言葉が生まれたのもこのころだ。

 成人を迎えると「年収300万円」時代の格差社会が待ち受けていた。ワーキングプア(働く貧困層)は現在の大きな問題だ。

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