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2008年06月11日(水) 08時01分

ヤミ金最高裁判決 ヤミ金撲滅の追い風産経新聞

 ヤミ金被害者の賠償が認められる範囲を返済額全額とした10日の最高裁判決は、消費者保護に重点を置いたものだといえる。ヤミ金業者は、貸せば貸すほど手持ち資金を失うことになるため、判決がヤミ金撲滅の追い風となることは間違いない。

 ヤミ金被害対策弁護団団長の宇都宮健児弁護士によると、出資法の制限金利(年利29・2%)を大幅に超える金利で金を貸した場合、下級審でヤミ金側の賠償責任が認定されるケースは多かったが、元本をどうみるかについては判断が分かれていたという。

 元本は本来はヤミ金側の金だ。例えば、ヤミ金から10万円借りて15万円返済させられた場合、借り手が懐を痛めたのは5万円。この5万円のみを賠償額とする考え方は、商行為としては筋が通っているように思える。

 しかし、この考え方では、ヤミ金側に元本の10万円が残ってしまう。ヤミ金はこの10万円を元手に新たな貸し付けをして、被害を拡大させる恐れがあった。

 最高裁は、民法の「不法原因給付」規定の趣旨を踏まえ、この10万円もヤミ金から取り上げる効果のある判例を作った。

 不法原因給付に当たるかどうかの判断基準としては「法律違反というだけでなく、社会の倫理、道徳を無視した醜悪なもの」という確定した判例がある。

 この日の判決のケースでは、年利が数百%〜数千%になっており、最高裁は貸し付けを「醜悪なもの」と認定した。どのような貸し付けが不法原因給付に当たるかは今後、判例を重ねるしかないが、異常な高金利の貸し付けは、ほぼ当てはまるとみられる。判決は、「ヤミ金を法的に保護する必要は全くない」との強い姿勢を示したと評価できる。(半田泰)

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