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2008年06月11日(水) 11時26分

長谷川穂積のボクシング世界戦に注目オーマイニュース

 亀田騒動も一段落。大場政夫以来の「ボクオタおじさん」の私としては、「やっと落ち着いた」という安堵(あんど)感とボクシング人気の再凋落(ちょうらく)の寂しさが入り交じり、複雑な感情を禁じ得ません。

 しかし、ここはひとつ、亀田騒動の際に「にわか」だった方々にも、あるいはボクシングにまったく興味のない人たちにもぜひ見てもらいたいものがあります。

 今週12日(木曜)に行われるWBC世界バンタム級王者・長谷川穂積選手の6度目の防衛戦です。当日の午後7時から、日本テレビ系列で中継されます。

 長谷川選手は27歳。一般の方々には知名度は高くありませんが、日本ボクシング界の誇る正真正銘のエースです。

 歴代の日本チャンピオンのなかでもおそらく最速であろうボディワーク。ファイティング原田をもしのぐのではと思われるハンドスピード。アンタッチャブルといわれた川島郭志に勝るとも劣らないディフェンス力。2階級王者で、私が子どものころ好きだった柴田国明にも並ぶパンチの多彩さとセンス。夭折(ようせつ)の天才・大場政夫に匹敵する打ち合いの際の負けん気。

 どれをとっても、最高レベルなのです。

 あの難攻不落といわれたウィラポンを2度退け、そのほかの防衛戦もTKOか大差判定勝利。特にウィラポン第2戦の9ラウンド、おとりの左ストレートを見せておいて、返しのこん身の右フックをカウンターでヒットしたKO劇は、恐ろしささえ覚えました。

 長谷川選手本人はボクシングの本場、ラスベガスへの進出を希望しています。実際、それだけの実力はあると見られ、日本人初のラスベガスでのビッグマッチも不可能ではありません。

 もちろんボクシングは水ものです。相手のクリスチャン・ファッシオ(コロンビア)も、見たことはありませんが、好戦的なパンチャーらしく、簡単に勝てるとは限りません。

 長谷川選手はアウトボクサーではありますが、要所の打ち合いには敢然と応じますから、いわゆる「塩試合(=しょっぱい試合)」にはならない代わりに、倒されるリスクもあります。いずれにしても、一触即発の試合が見られそうです。

 一部人気選手だけがマスコミにちやほやされ、本当に実力のある、見る者をうならせるボクサーの世界戦にテレビ中継がない実情は、嘆かわしいものがあります。

 5月19日、小堀佑介選手の「ライト級」の世界奪取劇もそうでした。世界の層の厚いライト級での世界奪取は、大変な快挙であり、試合内容も素晴らしいものだったようです。あのマニー・パッキャオとの対戦も取りざたされているのに、ほとんど話題になっていません。

 テレビ局は、視聴率だけを追いかけるのでなく、個々の選手の才能や力量をきちんとはかり、視聴者を「育てる」くらいの気骨ある番組作りはできないのでしょうか。

 ともかく、今週12日です。「本物」をぜひ見てください。

(記者:高根 文隆)

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