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2008年06月10日(火) 19時46分

「日本社会のストレスが凶行にかりたてる?」 海外メディアも「犯行動機」分析J-CASTニュース

 東京・秋葉原の歩行者天国で7人が殺害された事件は、海外でも関心が高く、各メディアが大きく報じている。事件直前の様子を容疑者が掲示板に「実況中継」していた様子のほかに、事件の背景として「日本社会のストレス」を指摘する報道も相次いでいる。

■秋葉原と犯罪とのつながりに関心よせる

 事件から丸2日が経過し、海外メディアの報道も、事件の概要を報じるだけでなく、犯行の背景について分析するものにシフトしてきている。各紙とも、殺人未遂の現行犯で逮捕された加藤智大容疑者(25)が犯行直前に行っていた「実況中継」の内容を詳報したり、教育環境について触れるなどしている。その中でも、事件が起きた場所が秋葉原という繁華街なだけに、各紙とも様々に「秋葉原」と事件の背景とを分析している。

 例えば、カナダの全国紙「グローブ・アンド・メール」紙は、「容疑者は、かつては嘱望された学生だったが、単純労働者として働いていた」との見出しを立てて詳報。

 同紙では、「加藤容疑者は、非常に異なった人生の境目に居続けてきた。教育での成果を重視する日本という国で、加藤容疑者は名門校を卒業した『エリート』とみなされてきた」

とした上で、大学受験失敗を機に「輝かしい学歴は『失速』した」と、(同紙によると)日本で重視される「教育での成果」においては、成功を収められなかったことを報じている。

 さらに、

  「容疑者のアパートに捜索が入ると、加藤容疑者がマンガのファンだという報道がされた。その結果、マンガのサブカルチャーの中心としての秋葉原の負の側面と、秋葉原と路上犯罪とのつながりについてスポットライトが当たることになった」

と、マンガと犯行の関係を示唆してもいる。

■「日本社会がもっと物騒になる前兆」

 一方、英BBCは

  「何が容疑者を攻撃に駆り立てたかについて言及するのは時期尚早」

としながらも、日本国内には

  「社会に適合しなかったり、職に就けなかったり、他人と同じようにふるまわなければ、社会からつまはじきにされる可能性がある」

との指摘があることを紹介。

  「日本社会がもっと物騒になる前兆で、日本社会では圧力やストレスが強いあまりに、問題を抱えた人々が凶行にかりたてられているのか」

とし、日本社会のストレスが事件の遠因になっている可能性について言及している。

 もっとも、全ての海外メディアが犯行の原因を日本社会に求めている訳ではない。例えば仏AFP通信は「悲劇が東京のオタクを襲う」との記事を掲載。秋葉原を「日本の『オタク』現象にとってのグラウンド・ゼロ(中心地)」として紹介した上で、秋葉原を歩いていた男子高校生の、こんな声を取り上げている。

  「この事件がオタクと結びつけられて、その結果、当局が不必要な規制を作るのではないかと心配しています。そういう意味では、これは単なる殺人事件ではなく、表現の自由に対する脅威です」

 その上で、18歳大学生の

  「しばらくは(秋葉原にとって)ネガティブな影響があると思います。でも、時間が経つにつれて、それは消えていくでしょう」

との声を紹介、秋葉原は徐々に平常どおりの姿に戻りつつあると報じている。


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