記事登録
2008年06月10日(火) 14時01分

東京・秋葉原通り魔:松井さん犠牲 「悔しいというか憎い」 /神奈川毎日新聞

 ◇親族、恩師、悲しみや怒り
 理不尽な凶刃が、夢をかなえた調理師の生命を奪った。東京・秋葉原で8日、17人が死傷した通り魔事件で、厚木市の松井満さん(33)が犠牲になった。「とにかく突然でがっかり」「悔しいというか憎い」。親族や恩師らは9日、悲しみや怒りを口にした。一方、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)の派遣先は横須賀市に本社があり「心から哀悼の意を表します」とのコメントを発表した。【田中義宏、吉田勝、高橋直純】
 「本当にあってはならないことが起きた。こんな事件は最後にしてほしい」。松井さんが卒業した厚木高等専修学校(厚木市恩名1)で担任だった小島繁雄さん(50)が9日、同市中町の厚木調理師学校で会見、松井さんの思い出を語った。
 松井さんについて「まじめで、努力家。基礎をしっかり身に着けようという姿勢で臨み、調理・飲食の世界で素直にやっていける生徒だったのに」といわれのない死を悔やみ、目頭を押さえた。
 松井さんは中学卒業後の90年4月、調理師学校に入学し免許取得後の翌91年4月、高等専修学校2年に編入。学校関係者によると、小中学校では休みがちだったが、両校では一転、3年間無遅刻無欠席だった。さらに栄養士の資格を取りたいと横浜市の専門学校へ。卒業後は調理師を務め、昨年4月からは厚木市の病院内の調理室で、患者向けの給食を手がけていた。
 松井さんが同市立森の里小学校で5、6年生だったときの担任で同市の小学校教諭、浅見照枝さん(58)は「みんなが気付かないことも率先してやってくれた。ご家族も大事にしていたのに……。とてもショックです」と肩を落とした。
 中学時代の同級生は「バスケットボール部所属で、大柄で明るいという印象がある」と語った。また、松井さんの弟の同級生で近くに住む男性(30)は「小さいころ家に遊びに行くとよくゲームをさせてもらった。優しくていい人だった」と言葉少なに語った。
 一方、同市森の里1の実家には事件発生半日後の9日午前0時半ごろ、父洋一さんと母、弟の3人が帰宅。取り囲む報道陣の問いかけには一切答えず、2階建て一軒家に入った。9日早朝の外出時も無言のままだった。
 9日午後、実家を訪れた叔父惣次さん(56)は「とにかく突然なので、がっかりというか、落ち込んでいる。何を言っていいか分からない」と話した。事件後初めて9日朝に病院で会った際、洋一さんは落ち込んでいるようだったという。
   ◇   ◇
 加藤容疑者は関東自動車工業の東富士工場(静岡県裾野市)に派遣されていたが、横須賀市の本社には9日早朝から報道各社が訪れた。実質的な本社機能は06年8月に同工場に隣接する東富士総合センターに移しており「人事管理はセンターでやっており詳しいことは分からない」と繰り返した。その後「お騒がせして誠に申し訳ありません。加藤容疑者は変わった様子もみられず、今回の事件には非常に驚いている」とのコメントを出した。

6月10日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080610-00000126-mailo-l14