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2008年06月10日(火) 12時03分

東京・秋葉原通り魔:周囲と交流持たず 警視庁捜査員、自宅を捜索 /静岡毎日新聞

 ◇見えない本当の姿 段ボール1箱分押収
 東京・秋葉原で7人が死亡、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された加藤智大容疑者(25)は、裾野市の工場で働く派遣社員だった。周囲とあまり交流はなかったが、勤務先ではまじめと評価されていた加藤容疑者だけに、職場や自宅周辺の人たちは「なぜ……」と大きな衝撃を受けていた。【浜中慎哉、山田毅、田口雅士】
 ◇マンション住人、驚きと不安
 ◆自宅周辺
 事件の一報が伝わった8日、加藤容疑者が住んでいた裾野市富沢のマンションの住人からは「びっくりして、現実味がない」など、驚きと不安の声が上がった。マンション周辺は同日午後から報道陣が詰め掛け、騒然とした。マンションの加藤容疑者の部屋には表札もなく、近所の人やマンション住民は報道陣の動きで、容疑者が住んでいたことを知った様子だった。
 容疑者の隣室に住む男性会社員(43)は「夜11時から午前0時ごろの帰宅時にすれちがう程度で、面識はない。夜時々音楽が聞こえたくらいで、特にうるさいとかの問題はなかった。半年ほど前から青森ナンバーの白い軽自動車が駐車場に止まっていたが、1カ月ほど前から車を見なくなり、本人も見掛けなくなったので、どうしたのかと思っていた」と話した。
 また9日午後には警視庁の捜査員が家宅捜索に入り、段ボール箱一つ分の資料を押収した。
 ◇「不審な点はなかった」
 ◆レンタカー
 加藤容疑者が2トントラックを借りたニッポンレンタカー静岡の米田智哉社長は9日会見し、経緯を説明。「事件に当社の車両が使われたことは誠に残念で痛恨の極み。このような事件が二度と起こらないことを切に願っている」と述べた。
 加藤容疑者は7日午後5時ごろ、同社の沼津駅南口営業所を1人で訪れ、「裾野市から御殿場市に引っ越す。3人分の荷物がある」と説明。4トン車など大きなトラックを借りようとしたが、対応した男性社員(26)との相談で2トン車に決まった。男性社員は「敬語交じりの会話で、不審な点は感じなかった」と説明しているという。
 事件当日の8日は午前8時前に同営業所に到着し、午前8時から12時間、トラックを借りる契約を結んだ。レンタル料の2万2785円は現金で支払った。同じ男性社員が対応したが、この時も特に不審な言動はなかったという。
 ◇「契約打ち切りで悩む」
 ◆派遣先
 加藤容疑者が昨年11月から派遣されていた裾野市御宿の関東自動車工業東富士工場は、9日正午から、生井修工場長らが会見した。
 会社側の説明によると、加藤容疑者の仕事は、車部品などの塗装を目で点検するラインの仕事。月〜金曜に働き、午前6時半〜午後3時5分の日勤、午後3時20分〜同11時15分の夜勤を、1週間ごとに入れ替えて働いていた。土日以外は休まず、生井工場長は「おとなしくて勤務態度はまじめだったと聞いている」と話す。
 ところが、事件3日前の5日、日勤の出勤後、作業着のつなぎがロッカーにないと騒ぎ、ハンガーを大量にまき散らして「なんでつなぎがないんだ」と大声で叫んだ後、無断で退社。翌6日朝に派遣会社から工場に「(本人は)もう一日考えさせてくれと言っている」と電話があり、6日も欠勤したという。
 同僚の派遣社員(34)は「いつ契約を打ち切られるかなどで悩んでいた」と話しており、加藤容疑者が“キレた”背景には派遣の地位の不安定さを指摘する声がある。

6月10日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080610-00000058-mailo-l22