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2008年06月10日(火) 12時03分

オーマイ読者相談室 妻に離婚を匂わされちゃった!?〜斎藤環センセイの回答オーマイニュース

(相談)
映像関係の仕事で、週2、3回しか家に帰れない日々です。妻はそんな生活に疲れているようで、「離婚して母子家庭になった方がまし」と言い出しました。妻はウソを言わない性格なので本当に怖いです。結婚して6年、変わらず妻も愛していますし、2人の幼い娘も可愛くていつも一緒にいたい。ですが仕事上、この生活を変えられる見通しはありません。周囲には「だから業界人にはちゃんとした家庭があまりないんだよ」と言われます。どうしたらいいでしょう? (32 歳、男性)

■斎藤環センセイの回答

 忙しくて週に2〜3回しか帰宅できない。お忙しいんですね。

 でも、ごめんなさい。それはホントにホントですか?

 男性ってね、僕もそうだけど、けっこう仕事を言い訳にするところがあるんですよ。泊まり込みが増えるのは仕方ないけれど、それでも家庭最優先できっちりスケジュール管理すれば、本当は週に4日くらいは帰れるんじゃないですか?

 深夜に帰宅して早朝出勤する、とか工夫すれば。

 なら、そうしてください。奥さんは、ちょっとでも帰宅しようとするあなたの努力を評価してくれると思いますよ。

 だって、僕の仕事もそうですよ。もう男がね、誠実に納得のゆくまでやってたら、仕事なんていつまでやっても終わるわけがない。毎日泊まり込んでも無理じゃないかな。

 だから手を抜くってわけじゃないけど、とりあえず必要最低限のラインを決めて、あとは見切る。そうしなきゃ、いつまでたっても帰れませんよ。

 それと、奥さんとはちゃんと話し合いをしましたか?

 最近気になるのは、若い世代にも意外なほど「男尊女卑」や「亭主関白」が多いってこと。もうあれはすたれた風潮だと思ってたんですけどねえ。

 あなたの相談の口調は一見優しげです。でも、けっこう奥さんに自分の意見を一方的に押しつけていませんか?

 「仕事なんだからガマンしてくれ」「喰ってくためにはしかたないんだ」「酒もバクチも浮気もしないだけマシじゃないか」といった発言、したことありませんか?

 さすがに禁句中の禁句、「喰わしてやってる」なんて、まさか言ってはいないでしょうね。この言葉は、妻に対する最大の侮辱の言葉ですからね。注意してください。

 いまどき、ただ食べさせてくれるだけで感謝、なんてありえませんから。

 だから、まずは奥さんと話し合いましょう。何度でも。

 そして、「どうしてほしいのか」を聞きましょう。ただし、すぐに答えてくれなくっても、決して問い詰めてはいけません。男は結論を急ぎすぎますからね。

 奥さんが答えてくれないとしたら、それはあなたにあきれている証拠です。「察してほしい」と思っているのですから、いろいろアイディアを出してみましょう。

 もし「こうしてほしい」という要望が出されたら、できるだけそれを聞き入れてください。とても無理な要求でも、なるべく「無理」とは言わないでください。

 かわりに「ここまでならできる」という妥協ラインを出してください。いいですか。今の生活や行動パターンを変えずに関係の修復はあり得ませんよ。

 もちろんコミュニケーションも密にしましょう。帰れない日は必ず電話しましょう。スケジュールをすべてカレンダーに記入して、まめにメールもしましょう。

 そして一番大事なこと。子育てに積極的に参加しましょう。子育て中のお母さんの孤独感は、男性の想像を絶するものがありますからね。 いつも一緒にいられないのなら、せめて休日には、愛する奥さん、娘さんを連れて遊びに行きましょう。わざわざ遠出しなくても、みんなで楽しく過ごせればいいんです。

 奥さんがみているのは、あなたが「どれだけ稼いでくるか」ではなく、「どれだけ変わってくれるか」ですよ。ご健闘をお祈りします。

■同じ相談への内田春菊センセイの回答は「 仕事のせいだけになっているようですが…

プロフィール
斎藤環[さいとう・たまき] 精神科医
1961年生まれ、岩手県出身。筑波大学医学研究科博士課程修了。医学博士。現職は、爽風会佐々木病院・診療部長。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、ラカンの精神分析、「ひきこもり」問題の治療・支援ならびに啓蒙活動。ひきこもりの第一人者で、著作に『社会的ひきこもり』『ひきこもり救出マニュアル』『ひきこもり文化論』など。漫画・映画・その他サブカルチャー全般を愛好。

(OhmyNews編集部)

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