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2008年06月10日(火) 15時06分

加藤容疑者を送検、起訴前に精神鑑定検討読売新聞

加藤容疑者を乗せ、万世橋署を出る車両(10日午前、読売ヘリから)

 東京・秋葉原で8日、17人が殺傷された無差別殺傷事件で、殺害された7人のうち4人は刃物で一刺しされたことが致命傷となっていたことが警視庁の司法解剖で分かった。

 殺人未遂容疑で逮捕された派遣社員、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)は調べに対し、「境遇に強い不満があった」と供述。その一方、「自分は精神病だ」とも話している。検察当局などは加藤容疑者の責任能力に問題はないことを確認するため、東京地裁に鑑定留置を請求する方向で検討を始めた。

 同庁幹部によると、加藤容疑者は取り調べに淡々と応じているが、自らの生い立ちに触れると涙を流し、「自分の置かれている境遇が本当に嫌だった」などと供述しているという。

 携帯サイトでの掲示板でも、「勝ち組はみんな死んでしまえ」「不細工な俺(おれ)は存在自体が迷惑なんだっけ」などと、生活への不満や孤独感を書き込んでいた。

 加藤容疑者は、犯行について「殺意はあった」と認めているが、「自分は精神病にかかっている」とも主張。その理由について、「子どものころ、親から『お前は必要がない』と言われてショックを受けたことがきっかけだ」と説明したという。

 これまでの調べで、加藤容疑者は、犯行前にナイフやレンタカーを準備し、犯行の数日前から当日にかけて、携帯サイトの掲示板で「秋葉原で人を殺します」などと予告していたことが判明。犯行に計画性があることや、その後、加藤容疑者が落ち着いて取り調べに応じていることから、検察当局などは、加藤容疑者の責任能力に問題はないとの見方を強めている。

 ただ、公判では、事実関係が争われる可能性が低い一方、加藤容疑者のこれまでの供述、動機や犯行態様の異常さから、責任能力の有無を争う可能性があると見ている。このため起訴前に精神鑑定を実施して、加藤容疑者の責任能力に問題がないことを確かめる方向で検討している。

 起訴前の精神鑑定には、簡易鑑定と正式鑑定の2種類がある。簡易鑑定は、検察が起訴前に医師などに依頼し、問診結果や捜査資料を検討して1〜2日で行う。一方、正式鑑定は、検察が起訴前に裁判所に鑑定留置を請求し、2〜3か月間かけて行われる。

 2001年の大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)の児童殺傷事件では、殺人罪などで死刑が執行された宅間守・元死刑囚について、大阪地検が2か月間の鑑定留置を行い、鑑定を行った後、起訴した。

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 警視庁は10日午前、加藤容疑者を殺人未遂容疑で東京地検に送検した。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080608-2810266/news/20080610-OYT1T00415.htm