記事登録
2008年06月09日(月) 23時54分

<秋葉原通り魔>中村さん「後進育成や地域医療に尽力」毎日新聞

 東京・秋葉原の通り魔事件で、被害者の東京都杉並区の無職、中村勝彦さん(74)は、歯の矯正を専門とする腕利きの歯科医だった。開業していた歯科医院があった東京都府中市の医師仲間らは「後進の育成や地域医療に尽力した立派な方だった」と実直な性格をしのんだ。

 中村さんは日本歯科大を卒業して開業。しかし、大学の医局に入って矯正学に挑戦し、自らの専門分野を確立したという。自らの医院で若手を育てる一方、日大歯学部で03年までの約20年間、兼任講師を務めた。

 指導を依頼された納村晋吉・日大名誉教授は「勉強熱心の硬骨漢。患者を大切にし、知識も豊富だから話がおもしろい。若手からも患者からも人気があったと思う」と語った。医師会の記念誌につづった「カラオケには二度行きましたが、小生にはあわないとさとりました」との文章からは、まじめさと愛嬌(あいきょう)を兼ね備えた人柄が伝わってくる。

 今春、教え子に医院を託し、半世紀近い医師人生にピリオドを打った。歯科医仲間らが開いた慰労会では「これからは勇退して好きなことをやりたい」と照れながら話したという。納村さんは「役目を終え、趣味の写真や旅行などで余生を過ごすはずだったろうに」と唇をかんだ。【木村健二、大場弘行】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080609-00000151-mai-soci