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2008年06月09日(月) 17時35分

【秋葉原通り魔事件】「就職決まっていたのに…」殺害された武藤舞さん産経新聞

 東京・秋葉原の通り魔事件で死亡した東京芸大4年、武藤舞さん(21)は電子オルガンの演奏が得意な学生だった。「いつもハキハキとしゃべっている姿が、目に浮かぶ。命を奪われていなければ、音楽の世界で、新しい企画を生み出して活躍していたに違いない」。武藤さんを指導していた音楽環境創造科、亀川徹准教授(47)は突然の悲報に言葉を詰まらせた。

<<写真で追う>>別の刃物も所持 過去30年最悪の通り魔被害か

 事件前日の7日、亀川准教授は大学で武藤さんと深夜まで録音作業をしていた。すでに就職の内定を受けていた武藤さんから「内定と卒論のことで相談させてほしい」と告げられ、亀川准教授は「じゃあ(9日の)月曜日に話そうね」と応えた。武藤さんも「それじゃあ」と笑顔で部屋を後にしたが、この会話が最後のやり取りとなった。「もっと話を聞いてあげればよかった」と後悔が募る。

 活発な性格だったという武藤さんは中学2年のとき、中学生約20人とともにアメリカ・カリフォルニア州で約10日間ホームステイした。武藤さんは留学後に書いた作文で「言葉が通じるか、ちゃんと生活できるのかと不安なことがたくさん」。しかし、人見知りしない性格ですぐにホストファミリーとうち解け、ファミリーの母親が学校に迎えに来てくれるなど楽しい日々を過ごした。

 滞在中には現地の中学校でハロウィンパーティーが開かれ、武藤さんは一緒に渡米した中学生たちと日本文化を紹介するブースを設けた。学生の名前を習字で書いたり、剣道を披露したりして会場を盛り上げ、作文では「とても充実したひととき」「すぐ帰国で悔しかった」とつづっている。

 今年1月中旬、ホームステイした仲間たち十数人で北区内の居酒屋に集まった。「音楽が大好きだから、音楽にかかわる仕事がしたい」。進路について話し合っているとき、武藤さんは目を輝かせながら語っていたという。

 集まりに参加した北区の大学生、本間和基さん(21)は9日朝、秋葉原の現場交差点で花を手向けた。「就職が決まったらまた集まろうと話していたんです。こんなむごい形で命を奪われ、犯人に憤りを感じる」と涙をにじませた。

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