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2008年06月09日(月) 00時16分

理不尽な凶行、21歳の女子大生も犠牲に 言葉失う遺族ら中国新聞

 正義感が強く家族に頼りにされていた男性。誰からも好かれる人柄だったという女子大生—。東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件は、何の落ち度もない人々の命を一瞬にして奪い去った。「まだやりたいことがあったろうに…」。最愛の家族を奪われた遺族は理不尽な凶行に言葉を失った。

 中村勝彦なかむら・かつひこさん(74)は八日午前、パソコン関連の買い物のため、めったに行かない秋葉原に長男と二人で出掛けていった。「昼ご飯を済ませてくるからね」。妻(74)の耳には、出がけの元気な声が耳に残る。

 変わり果てた姿の夫と対面したのは東京慈恵会医大病院(東京都港区)。「まだやりたいことがたくさんあったと思う。何を話せばいいのか…。無念としか言いようがない」。

 妻は生前の夫の姿を思い浮かべ、涙をこらえながら言葉をつないだ。「正義感の強い人だった。こういうことが二度とないようにと願っているのではないか」

 病院に付き添って来た長男は「気が付いたら父親がいないのでびっくりした。その時のことはよく覚えていない」と話していたという。

 二十一歳の若さで犠牲になった武藤舞むとう・まいさんは、東京芸大の音楽環境創造科の四年生。東京都北区の自宅近くに住む女性は「頭の良いお子さんだった」と振り返る。

 同じ中学の後輩だったという高校三年の女子生徒(17)によると、舞さんは中学時代、吹奏楽部に所属し、フルートを担当していたという。「OB会やOG会で面識がある。誰からも好かれる性格で、特に顧問の教諭とは仲が良かった」

 搬送先の東京医科歯科大病院(東京都文京区)には、午後七時四十分すぎ、両親と姉か妹とみられる三人が悲しみの対面を終えて玄関から外へ出た。ともに硬い表情で、無言で病院を後にした。

 死亡した松井満まつい・みつるさん(33)が住む神奈川県厚木市の主婦(52)は「小学生のころはおとなしい人だった。本当にびっくりしてショックを受けている」と話した。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200806090068.html