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2008年06月09日(月) 00時36分

「内定もらっていたのに」 理不尽な凶行、遺族絶句東京新聞

 就職の内定をもらっていた女子大生、正義感が強く家族に頼りにされていた男性−。東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件は、何の落ち度もない人々の命を一瞬にして奪い去った。「まだやりたいことがあったろうに…」。最愛の家族を奪われた遺族は理不尽な凶行に言葉を失った。

 21歳の若さで犠牲になった武藤舞さんは、東京芸大の音楽環境創造科の4年生。指導に当たっていた亀川徹准教授(47)は「一生懸命で将来が楽しみな子だった。演奏家を支えるマネジメントや企画の仕事を希望しており、就職活動でも内定を複数もらっていた」と沈痛な表情。「7日に卒業論文の相談を受けたばかりで『月曜日に続きをやろう』と話したのに」と絶句した。

 次女が舞さんと小中学校の同級生だったという近所の50代の女性は「最近は就職活動をしていて内定しそうだと聞いていた」。子どものころからピアノなどを習っており、成績優秀で積極的だった。「音楽会や文化祭でみんなをまとめるリーダータイプ。誰にでも優しく接してくれた子だった」と明かす。

 一方、中村勝彦さん(74)は8日午前、パソコン関連の買い物のため、めったに行かない秋葉原に長男と2人で出掛けていった。「昼ご飯を済ませてくるからね」。妻(74)の耳には、出がけの元気な声が耳に残る。

 変わり果てた姿の夫と対面したのは東京慈恵会医大病院(東京都港区)。「まだやりたいことがたくさんあったと思う。何を話せばいいのか…。無念としか言いようがない」。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008060801000621.html