記事登録
2008年06月09日(月) 11時11分

出生率上昇幅が大きかった香川、その要因は?オーマイニュース

 厚生労働省が6月4日発表した人口動態統計によると、女性1人が生涯に産む子供の推定人数(=合計特殊出生率)が、2007年は1.34と前年比0.02向上しました。2年連続の上昇です。

 ところで、前年比の上昇幅が最も高かったのはどの都道府県だったと思いますか?

 じつは記者の住む香川県と、広島県です。いずれも前年に比べ、0.06上昇しています。

 香川と広島が出生率の上昇幅が大きかったのはどうしてか?

 同じ瀬戸内海で支店経済の街、そして風光明媚で気候温暖な土地柄かもしれません。記者は外出時、街を通っています。昔と比べ、変わったところはさほど見当たりませんが、郊外の都市化が進んでいること、中心部の子供の数が少なくなっていることなどが変化に感じます。そうなると、子供の数は横ばいか微減となっているのではないか、と思いましたが、統計はそうではありませんでした。(香川の2007年の合計特殊出生率は1.48。都道府県別には、全国9位)

 ところが、香川の場合、地元をベースに全国へとネットワークを広げる子育て支援団体が活躍しています。これが出生率上昇の一因ではないでしょうか。

 それはNPO法人「わははネット」でず。坂出市の主婦が子育ての苦労体験をもとに10年余り前に仲間と立ち上げ、現在は、高松市に事務局を置く子育て支援団体です。

 設立以来、子育て情報誌を発刊して子供に関わる情報を紹介したり、グループに参加した方が企業とタイアップして、子育てタクシーや、子育て対応マンションを始めました。その活動は次第に行政や企業にも浸透していき、全国からも注目を受けています。

 今回のデータについて、専門家はどう見ているでしょうか。

 保母、教諭、さらに児童福祉に携わる方は、「わははネット」の役割は大きいと見ています。“香川型子育て支援”を確立し、さらに追随して、「親父塾」も盛んになっているのは、この支援団体の成果、との見方が一般的です。

 ただ、香川の合計特殊出生率はそれまでの3年間、減少が続いていました。それは6年前のある事件が原因ではないか、と見る向きがあります。

 その事件とは、2002年、香川町(現在の高松市香川町)の無認可幼稚園(現在は休園)で園長が通園幼児に対して虐待を繰り返して死亡させた一件です。全国的にも報道されたので記憶があるかと思いますが、傷があるのを分かっていて、どうして通園させていたのかという両親への責任の声もあった一方で、裁判では香川県庁の担当セクションの対応の怠慢を認定し、県が謝罪しました。この事件を機に、行政は保育園や幼稚園への指導を強化したほどです。

 「この1件によって、若い方々が心理的な面で子供を産むのをためらっているのを耳にしました。彼らにとって、ダメージの大きかったのではないのか?」

と言うのが一致した声です。

 では、出生率が上昇に転じたこの状態を今後も持続させるには、どうすればいいのでしょうか。

 わははネット代表の中橋恵美子さんは、

 「行政が大胆な政策を展開することが要」

と話します。行政の対応もさることながら、乳幼児期の幼稚園・保育園における教員や保母の確保こそが、重要ではないかと記者は感じます。

 子育て真っ最中の親からも、支援団体の役割が大きいということは、その分、幼稚園や保育園の機能に足りない点がある、ということであり、まず、幼稚園や保育園の職場環境を充実させるべきとの声を時々聞きます。

 記者個人の案ですが、子育ての割合は、幼稚園・保育園5、家族3、支援団体・地域2というバランスがいいのではないでしょうか。すなわち支援団体には脇役に徹してもらう半面、幼稚園や保育園に対する支援に重点を置く行政に転換すべきであろうと考えます。

 財政面で大変な中、中橋さんが言ったように、行政がどのように積極的な政策を展開できるのか。若い方々にとって子育てがしやすい環境の推進をぜひ望みたいところです。

(記者:笠井 隆宏)

【関連記事】
出生率上昇中、小さな町の子育て支援
笠井 隆宏さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
香川
子育て
出生率

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080609-00000005-omn-l37