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2008年06月09日(月) 09時57分

悪徳不動産業者はこうやって客をダマす(下)オーマイニュース

からのつづき)

 今回明らかになった「建築条件付売り地」に関する悪質な契約行為では、土地に関する重要事項説明書・売買契約書と同時に、建物の建設工事請負契約書が一連の流れで説明されました。そして署名・捺印は最後にまとめて行なっています。

 説明はすべて「宅地建物取引主任者」によって行なわれています。これは関係法令の勉強を積み、資格を持った者がこれら一連の作業を行ったということです。

 売主業者が出したチラシ広告の「建築条件付売り地」に関する説明には、前回紹介した趣旨の説明が書かれています。「建物の請負契約については、土地契約から3カ月以内に成立させることで……」という説明です。

 これは「土地の契約が終わった後に、建物について、建築確認申請が出来る程度の段階まで打ち合わせをした上で、合意ができれば、建物の請負契約を交わして、土地の契約を成立させましょう」と言うことです。

 しかし本件では、土地売買契約の前はもちろん、その後においても、「建物に関する打ち合わせ」は何も行われていません。間取りなどの基本的な部分ですら、一切打ち合わせをしていないのです。

 にもかかわらず土地の契約と同時に、建物1階床面積(49.70平方メートル)、2階床面積(44.73平方メートル)、請負金額1650万円、そして工期は2008年7月20日(予定)〜2008年11月20日(予定)として「建設請負契約書」が締結されました。

 売主はこの件について「とりあえず売主所定のモデルプランを書き込んでおく」「後日、打ち合わせを行なって変更するから大丈夫」と説明しています。しかし、正式な契約には、「とりあえずのプラン内容」などは、全く必要ありません。

 契約書とは、当事者が合意した内容を正確に記載したものです。そして、内容については双方が誠意を持って履行することが大前提です。買主の意志が全く反映されていない、「とりあえず」の面積・金額・工期を記載した“紙”が、正式な契約書であるわけがないのです。

 買主はその請負契約書に1万5000円の収入印紙を貼らされています(買主負担)。それはこの契約が正式な契約書をもって成立したことを意味します。

 買主は今後の建物の打ち合わせで、内容に不満が募り解約を申し出れば、それはもう買主の「わがまま」「契約不履行」として、違約金を請求されることになります。

 この「建築請負契約書」は、売主業者が土地売買契約を確定させることを意図として、便宜的に作ったものにほかなりません。その結果、買主が土地売買契約を白紙解約できる権利がなくなりました。

 トラブルを回避するためのポイントは明らかです。

◇「建築条件付売り地」の契約に際しては、「土地売買契約」と同時に「建物の請負契約」を締結してはいけません。

 土地契約の後、建物に関する打ち合わせを重ねて、合意に至ってから、建物の請負契約を締結します。

◇建物請負契約書の締結がされないうちに、土地代金の決済(残金支払い)をしてはいけません。

 土地契約書に記載される「残金支払い時期・所有権移転の時期」は、建物請負契約を条件とした定められた期間(3カ月が一般的)をもとに設定してください。

◇定められた期間に、「建物についての合意」がなければ、土地売買契約は白紙となり、支払った手付金は無利息・無条件で返金されなければなりません。

 契約に際しては、そのことをしっかり確認して、間違いのないようにしてください。

◇「建物の合意はできないが土地はほしい」場合があります。「建築条件付売り地」は、建物と土地が一対の商品として表示されていますので、素直に考えれば別売りは出来ないことになります。しかし売主が了解してくれることもあります。交渉してみましょう。

 × × ×

 「建築条件付売り地」を取り扱う業者の大半は、問題ない契約内容で、真面目に営業しているはずです。だからこそ、本件と同様の不法業者を野放しにしておいてはいけません。そのような業者の被害に会わないように気をつけてください。

 なお、「建築条件付売り地」については、法律関係者の間には、「違法性がある」と言う方がいます(独占禁止法違反)。ただ、現実には当事者が法廷で争う事例がなく、判例がないことでグレーな状態が現在も続いているのが実情です。 (了)

(記者:星野 文孝)

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