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2008年06月08日(日) 16時23分

容疑者、取り押さえられ「ウォー」〈秋葉原事件6〉朝日新聞

 「ドン」。音に驚いて外へ出た近くの飲食店の男性従業員(42)によると、複数の人が倒れた交差点に駆けつけた警察官の背後から、若い男が近寄り、刃物のようなもので左脇腹を後ろから突然刺した。警察官は脇腹を押さえながら崩れ落ちた。地面にはみるみる血が広がったという。

 男はさらに、もう1人男を刺し、そのまま中央通りを南の方へ走った。通行人は、一斉に叫びながら逃げ回った。

 近くにいた大学生(21)は、交差点で警察官が倒れているのをみて危険に思い、自分は電器店街のビルに逃げた。30メートルくらいところに男性が仰向けに倒れていた。道路に血がたくさん流れていた。男性の周りで、数人が心臓マッサージなどをしていたが、本人は意識がないようだった。しばらくすると、警察官が血のついたサバイバルナイフを持って、交差点を歩いているのが見えたという。

 事件現場に居合わせた千葉県流山市の会社員男性(59)には、右手に刃物を握りしめた30歳ぐらいの男が見えた。距離は5メートル。迫ってくるような威圧感。「逃げろ」という声が近くで聞こえると、周りの買い物客らが一斉に走り出した。悲鳴に近い声があちこちで上がる中、男性も「刃物を持って暴れている男がいる。逃げろ」と叫びながら走って逃げた。「やられると思い、必死で逃げた」という。

 午後0時40分ごろ、足立区のフリーターの男性(19)は逃げる男を目撃した。追いついた警察官が「おとなしくしろ」といい、電器店のシャッターに加藤容疑者の頭を押しつけて取り押さえた。男はめがねをかけ、短髪、上下ベージュの服を着ており、「ウォー」と、言葉にならない叫び声を上げた。

 まもなく白衣を着た男性が男の脈拍をはかった。ほかの警察官数人が到着すると、男の両手にその場で手錠をかけた。その際は抵抗する様子がなかったという。

 買い物に来た足立区の男性(48)は家電量販店前の路上で男性が倒れているのを目撃した。通りがかった男女が血が流れている背中をタオルで押さえていたが、男性は言葉を発していなかった。

 現場に居合わせた東京都足立区の看護師の男性(35)が男が乗ってきたトラックに近づくと、携帯電話の販売員とみられる服装の女性や40歳ぐらいの男性が血まみれで倒れていた。顔は真っ青で、話もできない状態。周囲の人が介抱し、「死ぬな」「大丈夫か」と呼びかけていた。

 現場では救急隊員が「AED(自動体外式除細動器)が足りない」と叫び、男性も秋葉原駅まで調達に走った。

 東京慈恵会医科大学病院(東京都港区)には、74歳の男性1人が搬送された。病院職員の説明によると、この男性は午後1時40分ごろ、救急車で運びこまれたが、1時44分に死亡が確認された。病院の急患入り口には、救急車が横付けされたままで、警察官数人が、救急棟に出入りしていた。義理の父が事件に巻き込まれたと聞き、病院に駆けつけた男性(40)は「買い物に来ていて、トラックにはねられたらしい。犯人はゆるせない」と言った。

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