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2008年06月08日(日) 14時59分

「法律婚原理主義」に一石を投じた国籍法違憲判決オーマイニュース

 最高裁は6月4日、「結婚していない日本人の父と外国人の母とのあいだ」に生まれた子に対し、「両親が結婚していないことを根拠に日本国籍を認めない」国籍法の規定が、憲法に違反するとの判断をした。日本社会における家族形態の多様化を読み取った、時代を画すべき判決である。

 生物学的両親が法律学的に「結婚していること」を条件に、子の日本国籍取得の可否が決められる感覚が、現代の社会実態にそぐわないと法の番人が認めたことは、日本社会のかたくなな「法律婚原理主義」的体質に一石を投じたと言って良いだろう。

◆パートナーシップ=準婚

 今、日本では、いわゆる事実婚(籍を入れないまま、実態上、夫婦の生活を営むこと)を選択している男女カップルが増えていると言われる。旧来の結婚という形式にとらわれない理由もさまざまだろうが、「戸籍制度」や「結婚にまつわる慣習」への抵抗感、結婚したことでかえって収入が減るなどの経済的問題などを踏まえ、より自由で合理的な「人生への向き合い方」を求めるカップルが増えていることの反映と見える。

 事実婚関係の権利・義務を明示した法律はないが、「みなし夫婦」の扱いによって、例えば年金・健康保険などの受給権、賃貸借の継承権、公営住宅などへの入居権、および同居・協力扶助の義務、貞操を守る義務、生活費用を分担する義務(準夫婦財産制)などが、実態上は認められていると言われる。

 一方、配偶者相続権・配偶者控除などがない、保険料の受け取りに制約があるなど、不利益要素も数々残ったままだ。

 男女カップルの「結婚しない選択」がある程度許容されるようになり、「結婚していない両親」の子にも法の下の平等原則が適用されなくてはならないと、社会実態の変化を最高裁までもが認めた。もはや、カップル=パートナーシップの目標点が「結婚」ではなくなっている現在、結婚に準じるパートナーシップ=準婚の概念を、早く日本にも導入すべきではないのか。

◆同性のパートナーシップも

 しかも、パートナーシップは男女カップルだけに限定されるべきではない。同性カップルもまた「結婚しない(正確にはできない)」パートナーシップの一形態なのである。

 男女とは言え、「人生への向き合い方」「国籍問題」など多様な理由で結婚を選択しない(できない)カップルがある。そして、いきなり結婚の概念を適用することには、遺憾ながら社会通念上の抵抗が残るであろう同性カップルの存在がある。さらに、信頼できる友人同士、助け合う高齢者同士や障害を持つ人たち同士、あるいはその支援者と……など、恋愛関係とは異なる精神的つながりを有したパートナーシップも、またいろいろある。

 政府は、今回の最高裁判決が強く示した「法律婚原理主義」に対する問題認識を受け、国籍法の整備だけにとどまらず、この際、今後ますます複雑多様化するであろうパートナーシップを念頭に、それらの権利・義務を定める法律の整備とともに、パートナー登録制度の実現に向け、大きくかじを切るべきではないだろうか。

(記者:中井 伸二)

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