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2008年06月08日(日) 14時50分

激戦終えた民主党の大統領候補選、米国民は何を求めたかオーマイニュース

 アメリカ大統領選挙の民主党候補者選びは、激戦の末にバラク・オバマが勝利を収めた。この長期にわたる激戦と、本命と思われていたヒラリー・クリントンの敗北に、アメリカ国民の苦悩を見る思いがした。二人は何を競い、国民は何を望んでいるのだろうか?

◆「変化」と「経験」

 結果的には、オバマの勝利は自明であったのかもしれない。小差ではあったが。

 オバマは「変化」を掲げ、クリントンは「経験」を訴えた。そして、今のアメリカ国民が求めたものは、当然のことながら「変化」であった。これが、本来はクリントンがかなりの差で勝つと思われていた戦況をひっくり返す要因となったのではないか?

 国民はブッシュ政治の8年にうんざりしている。特に泥沼化するイラク戦争、BRICs諸国の台頭や中南米諸国の離反、EU(欧州連合)の独自な歩み、また国内にあっても貧困・格差社会の進行など、閉塞感に覆われている。「新しいアメリカへの変化」こそが国民の求めるところであるだろう。

 「経験のない者に政治ができるか」という主張がある。共和党候補のジョン・マケインもオバマに対して言うかもしれない。しかし、経験者がその経験に頼る限り新しいものは生まれてこない。むしろ「経験のない者」をこそ国民は求めているのではないか?

 ホワイトハウスには、アメリカ建国以来の「200年の経験」が蓄積されている。誰がなっても経験に困ることはないのではないか? むしろその経験以上のことはやらない惰性の方が困るのだ。

 国民がそのことを感じていたとすれば、この勝敗は自明であったと言えよう。

◆「初の黒人」と「初の女性」

 もう一つ。初の女性大統領と初の黒人大統領──というテーマはどう作用したのだろうか?

 オバマに勝利を与えたことにより、アメリカ国民は、まだ残る女性差別として、女性大統領の出現を拒んだのではないかという意見もある。しかし私は、アメリカは女性大統領を迎える機運を十分に持っていると思う。世界に女性のトップを持つ国は多く、特にクリントンの長期にわたる準備と、彼女を大統領候補として本命視する機運は十分に出来上がっていたのではないか(あのタイプは女性に嫌われるタイプとも聞くが)。

 それよりも、オバマという黒人候補を選んだところに、より大きい国民の決断を見る。

 オバマは既に黒人ではない、という意見がる。確かにオバマは2歳にしてケニア人の父と別れ、白人の母の家族で育てられた。加えて、コロンビア大学、ハーバード大学という名門を経て弁護士として活躍。その後まだ一期といえども上院議員を務めたとあれば、れっきとした最上層のアメリカ人で、もはや黒人ではないと言えるかもしれない。

 しかし、アメリカの政治は一貫してWASP(White Anglo-saxon Protestant=白人でアングロサクソン系のプロテスタント)という超エリートに握られてきた。そのことからすれば、いくら上記のような経歴の持ち主とはいえ、アフリカ黒人を父に持つ人間を大統領にしようとする決断は、画期的な事ではなかったか。

 このような決断をせざるを得ないほど、アメリカ国民は閉塞感に悩まされ、「新しいアメリカ」を求めているのではないか? 各国から移民を受け入れ、多民族国家としておおらかに成長しながら、一方で、奴隷制度や人種差別など負の遺産を引きずりながら歩いてきたアメリカは、今、大きな転機にさしかかろうととしているのかもしれない。

 11月の本選挙では、人種や性別差別などを超越した高い次元で、「新しいアメリカの進路」を求め合うことを期待してやまない。

(記者:首藤 和弘)

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