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2008年06月08日(日) 19時59分

理不尽な凶行、言葉失う 秋葉原の無差別殺傷東京新聞

 「主人はまだやりたいことがたくさんあったと思う」。理不尽な凶行で夫を失った妻(74)は、うつむきながら言葉を絞り出した。7人が死亡した東京・秋葉原の無差別殺傷事件。突然家族を奪われた遺族らは、やり場のない無念さをにじませた。

 亡くなった夫(74)は8日午前、長男と2人で秋葉原にパソコン関連の買い物に出掛けた。「2人で昼ご飯を済ませてくるからね」。元気よく出掛けて行った夫。それが顔を合わせた最後になった。

 変わり果てた姿で夫が搬送された東京都港区の東京慈恵会医大付属病院。「何を話せばいいのか…。無念としか言いようがない。(秋葉原には)めったに行かないのに」。妻は涙をこらえながら言葉をつないだ。「正義感の強い人だった。夫もこういうことが二度とないようにと願っているのではないか」

 病院には一緒にいた長男が付き添って来た。「気が付いたら父親がいないのでびっくりした。その時のことはよく覚えていない」と話していたという。

 死亡した女性を含め、男女3人が搬送された東京都文京区の東京医科歯科大病院。ハンカチで涙をぬぐいながら玄関から出てきた男性は、報道陣の取材に無言のまま。「彼女のために祈ってください。帰ります」とつぶやき、足早に立ち去った。

 「到着時には心肺停止だった。傷は背中に1カ所、肺にまで達していた。蘇生(そせい)術を行い手術したが残念ながら…」。東京都新宿区の東京女子医大病院では男性が死亡、広報担当者が沈痛な表情で説明した。

(共同)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008060890195918.html