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2008年06月06日(金) 14時18分

物価高騰が招く長期金利上昇が現役世代をさらに圧迫!ダイヤモンド・オンライン

 世界的な長期金利の上昇が続くなか、巷に不安が蔓延している。「ただでさえ苦しい資金繰りがますます厳しくなる」という企業関係者や、「ローンを抱えているので家計が破綻しないか心配」という主婦まで、不安の声は日に日に強まるばかりだ。

 長期金利の代表的な指標である「新発10年物国債利回り」は、今年3月までは1.2%台まで低下していたが、4月から反転してみるみる急上昇。6月頭にかけて、昨夏以来の高水準となる1.7〜1.8%の水準に達した。

 その理由は、米国発の金融不安が和らぎ、債券売りが始まって金利が上昇しているためだ。それに拍車をかけるのが、世界的な「インフレ見通し」。原油・食糧価格高騰が続き、「インフレ圧力で中央銀行がこぞって利上げに動く」という観測が強まって、さらに金利を押し上げた。

 実際、長期金利上昇の悪影響は大きい。たとえば、円高や原燃料価格高騰に悩む企業には、今後「長期資金の借り入れコスト増大」というリスクが加わる。特に、昨年から倒産が増え続けている中小企業は悲惨だ。「銀行の貸し渋りが始まっているうえ、借り入れ金利も上がるのでは、泣き面にハチ」(中堅メーカー関係者)。最悪の場合、設備投資減少、人員整理、倒産といった「負の連鎖」に陥ることにもなりかねない。

 給料が増えずに物価が上がり続けるなか、家庭が被る影響も無視できない。特に住宅ローンを抱える30〜40代の「働き盛り世代」は苦境に陥る。長期金利上昇を受け、メガバンクは一勢に新規融資分のローン金利を上げている。借り手が多い「10年固定金利の商品」を例にとれば、4月からの2カ月間で、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が計0.45%、三井住友銀行が同0.55%、りそな銀行が同0.5%も金利を上げた。金利優遇を割り引いても、3%台が続いたローン金利が4%を超える水準に近づくのは、大きな痛手だ。今後、ローンの借り換えを考えている家庭は要注意である。

 ニッセイ基礎研究所の分析によれば、「長期金利が1%上昇すると、日本全体の住宅ローン負担が3.3兆円も増える」というから、ただごとではない。「住宅ローン金利の上昇により、昨年よりもさらに住宅販売数が落ち込んだ」(中堅住宅メーカー)というように、家庭の「金利アレルギー」は増すばかりだ。

 もちろん、長期金利の上昇は悪いことばかりではなく、「預金金利が上昇する」というメリットもある。住宅ローン返済を終わらせて預金を多く持つ高齢世帯にとっては、むしろ「追い風」にもなる。

 しかし、やはり不安は募る。直近では、欧米金融機関の損失拡大懸念が再燃し始め、長期金利の上昇も一服しているが、それはあくまでも短期的な現象だ。世界的なインフレ懸念が背景にある以上、この先も長期金利が上昇するトレンドに変わりはないということを、覚悟しなくてはならない。

(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

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