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2008年06月06日(金) 22時34分

「国民の祭り」となった、韓国の米産牛肉反対集会オーマイニュース

 もはや「国民のお祭り」だ。

 既報「収まらない国民の怒り、韓国政府が窮地に」で伝えた、年齢制限のない米国産牛肉の輸入に反対する韓国国民のろうそく集会が6月5日から7日まで72時間連続で行われている。韓国オーマイニュースがその模様をライブ配信している。

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 三日間累計10万人(主催者発表15万人、警察発表7万人)が集まった先週末(5月30日〜6月1日)のろうそく集会後、韓国政府は、「米産牛肉輸入の再協議の可能性はある」とし、また、参加者に暴力を振り回した警察関係者を懲戒するとの発表もあった。

 しかし、週明けになってアレキサンダー・バーシバウ(Alexander Vershbow)在韓アメリカ大使が「再協議は難しい」と断言し、「韓国国民に失望した」と発言したことが火に油を注ぐ結果となった。

 さらに李明博大統領の実兄である李相得ハンナラ党議員も「仕事のない人間がろうそく集会に集まる」と言い放った。

 これらの発言に、ネットユーザーたちが猛反発。

 今やろうそく集会の「作戦司令部」となっている韓国大手のポータルサイト・ダウムの討論掲示板「アゴラ」やコミュニティ掲示板サイト・ディシーインサイドなどからは次々と「街に出よう」との呼び声が噴出した。

 面白いのは、ろうそく集会の変化だ。これまでのろうそく集会は良くも悪くも主催団体の政治的な意図があった。今回も1700余りの市民団体で作られた「BSE国民対策会議」(以下、国民会議)が存在するが、彼らは「秩序の維持と警察との衝突を防ぎ、もし負傷者が出たら後方支援する」ことを明言した。

 国民会議の関係者がこう語る。

 「連日5万以上なんでコントロール自体ができません。そうしようとも思っていない。舞台を設営したり、逮捕者が出た時に抗議したり、ピケを作ろうとする人がいたら道具を貸したりなどしています」

 6月5日からスタートした72時間リレー集会に参加した人々は、韓国オーマイニュースの取材にこう答えている。

 「連休何しようかと友たちと話してて『市役所でも行こうか』になってて、まあ、遊びも兼ねてきました」(15歳、女性高校生)

 「ほかに出て行くと金掛るし、天気もいいと聞いたんで、家族で来ました。いろんなバンドの公演もあったりして楽しいです」(34歳、妻と息子連れ)

 ネットユーザーたちは、これを「建国以来の初めて行われる『国民MT』」と名付けた。普段MT(Membership Training)は、新入社員で行う団体研修会のことだが、韓国では「集団で遊ぶこと」をしばしばMTと呼ぶ。つまり、全国民が集団で遊ぶ場、という意味だ。

 警察に逮捕される恐れはある。先週のろうそく集会では229人の逮捕者が出た。しかし、釈放者たちが警察署での体験談をネットに書き込み始めると、「恐れ」も「遊び」に変わった。中にも「警察バスツアー」という皮肉な体験談が大ブレーク。

 「(警察バスに)乗ったら意外に面白かったです。皆さんも乗るチャンスがあったら、必ずデジカメを用意して車内をいろいろ撮ってください。警察バスに乗ってソウルを眺めるなんて一生の思い出になります。警察署からご飯もくれるし、コーヒーやお茶もくれる。結構いいサービスです」(ダウム・アゴラID:バスツアー好き好き)

 「新観光商品登場! 親切なポドリ(韓国警察のイメージキャラ)がソウル市内を徹底ガイドします。朝食付きですべて無料です!」のコピーを謳ったポスターなどいろんなパロディ作品が制作された。

 この変化に、「386世代」は驚きを隠せない。386世代とは、90年代に定着した用語で30代、80年代に大学生、60年生まれを意味するもの。いわゆる民主化運動世代だ。催涙弾と火炎瓶、そして「動員」は、常識だった。

 しかし、今回の集会は、参加者の体験談と現場写真・映像がリピーターになった。動員ではなくネットユーザーの自発的な参加がメイン。既にダウム・アゴラは「民主主義の聖地」と呼ばれている。また、連日集会の模様をライブ中継している韓国オーマイTVには、6月6日現在2万人余りの視聴者から1億3千万ウォン(約1千300万円)の支援金が寄せられた。ネットが新たな常識を作っている。

 国民会議もアゴラも6月10日をD-dayと設定した。87年6月に起きた民主化運動の始まりの日でおよそ10万人を超える人々が集まる予測だ。李明博政府が10日まで答えを出せるのか注目したい。

(記者:朴 哲鉉)

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