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2008年06月06日(金) 22時29分

アイヌ民族を先住民と認める決議を採択オーマイニュース

 5月23日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会で、高村正彦外務大臣が、「国際的に確立した先住民族の定義がない」 「アイヌの方たちが先住民族だと現時点で認定できない」と冷たい発言をした時点から半月後、6月6日に、参議院と衆議院で、『アイヌ民族を先住民と認める決議』が採択された。

 アイヌ民族の苦難の歴史を考えると、今まで日本の歴代の外務大臣達が、「アイヌ民族は先住民だと認定出来ないけれども、アイヌの人々の人権面やアイヌ文化の振興面は援助助成する」と、グレーゾーンの答弁を繰り返した事は矛盾だった。

 喜納昌吉議員が同日、「日本政府が、アイヌ民族を先住民族として認めていないことによって、北方領土の領有権の主張がロシアや国際社会に対して弱まっている。ロシアの総領事は(先住民の視点)からならば、ロシアは相談すると言っている」(国会会議録より)と発言した事が私は気になる。

 私たち、日本人が、北方領土の返還をロシアに求める事は当然であると考える。しかし、それと同時に、北方領土にも居住していたアイヌ民族という先住民族の面からも、ロシアの1945年以降の北方領土占領政策の矛盾的根拠を切り崩せる側面が、もっと、今まで、あったのではないだろうかと思える。

 アメリカは19世紀まで、多くのアメリカ先住民族を大虐殺してきた。しかし、現在は、先住民族の権利について最大限に優遇する方向に政策転換している。

 世界的な原油高の中で、領土問題に関して、一層強気になり、軍部の勢いも増しているロシアに対しては、今後、アイヌ民族の権利の面からも、北方領土での政策転換を求めて行く事が、今後の日本に、やはり必要なのではないだろうか。

 私は、北海道ウタリ協会の人にも電話で、今回、先住民としての決議採択が行なわれた部分について質問してみたら、以下の回答を得た。

 「今まで、アイヌ民族を先住民として認める決議が遅れたのは、政治的な部分もあったと思うのです。アイヌ民族から土地を返せとか、賠償要求がある事を政府が極端に恐れた側面もあったのではないでしょうか。今後は、アイヌ民族の権利に関して、もっと高いプロセスの決定が出来る審議機関に、アイヌ民族のメンバーが参加出来るようになって欲しい。対等の立場で、現実に可能な事を実現したい。アイヌ側も、無茶な要求をするつもりはないでしょう」

 アイヌ民族への理解は、江戸時代の松前藩の苛酷な政策からアイヌ民族を守り、日本の国境を守るために活躍した探検家の最上徳内の生涯も関係してくる。日本国は、最上徳内の高潔な先住民へのいたわりの精神や理想を思い出し、今後のアイヌ問題に真摯に取り組むべきだ。

(記者:谷口 滝也)

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