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2008年06月06日(金) 11時54分

パートナーに依存しすぎると…〜亀山早苗コラムオーマイニュース

 誰かを好きになれば、多少なりとも精神的に依存するものだ。だが、それが過ぎれば恋愛の範ちゅうを越え、相手も疎ましく感じるようになる。男女問わず、「恋愛なんてどうでもいい、興味がない」と言い切る人が増えている半面、「自分をわかって」ほしいあまりに依存度が高まる恋愛もまた、多くなっているようだ。

 「前の彼に二股をかけられていたんです。ある日、それを彼の友だちに知らされて、ショックを受けて彼を問いつめたら、『オレ、あっちの彼女と一緒になるから』とふられて……。3年もつきあって、彼のことが好きだったから言いなりになってきたのに。私の3年間は何だったんだろうと思うと、悔しいやら情けないやら。うつうつと過ごしていたら、私に彼の二股を告げてきた友人から、告白されたんです」

 玲香さん(31歳・仮名=以下同)と、2歳年上の前カレの友人・昌広さんとは、そうやってつきあいが始まった。前の彼のことを知っているだけに、玲香さんは昌広さんとは気軽に何でも話せた。最初はそれでよかったのだが、彼女はだんだん昌広さんに依存するようになっていく。

 「前カレのことをぐちぐち言ったり、寂しくて夜中に昌広さんを呼び出したり。彼も最初は『ヤツのことが忘れられなくてもいいよ。オレが全部受け止めるから』と言ってくれていたんです。でも、だんだんと前カレのことを話すと嫌がるようになっていきました」

 それはそうだろう、と一般的には思うはずだ。いつまでも前の彼のことを愚痴っている彼女を目のあたりにして、今の恋人である昌広さんは歯がみするほど悔しい思いをしていたに違いない。

 「それでも半年ほどは、週に2回くらいは会っていたし、週末は一緒に映画や美術館などに行ったりもしていました。だけどあるとき、映画の帰りに、私がふいに前カレの思い出話をしていたようなんです。いつもなら何も言わずに聞いてくれる昌広さんが、『いいかげんにしろよ』と言うなり、私をその場に置いたまま走り去ってしまった。ものすごいショックでした。前カレに裏切られたことを知っているのだから、私に寂しい思いはさせないと言っていたのに、私のすべてを受け入れると言っていたのに、結局、私は置き去りにされてひとりぼっち」

 そのときは話し合って、この難関をふたりで乗り越えようと決めた。彼女は相変わらず、昌広さんの仕事の都合も考えず、自分の気持ちが不安定になると夜中でも電話をかけ、来てもらっていた。だが、1カ月もしないうちに、昌広さんは夜中の電話には出なくなった。「仕事が忙しくて、夜中は熟睡している」というのが言い訳だったが、玲香さんは彼の心の微妙な変化を感じ取った。

 「ますます不安になって、夜中にさらに電話をかけてしまう。心療内科にも通いました。彼しかいないのに、彼を逃したら生きていけないのに、という思いでいっぱいだった」

 だが、彼女は本当は気づいていた。昌広さんに本気で恋しているわけではない、寂しさを埋めてくれる人がほしくて、自分の心の重さを半分引き受けてくれる人が必要で、だから無理やり恋をしているだけなんだ、と。ただ、それを認めたら、自分自身が崩れてしまう恐怖感があった。

 恋愛は、ある意味で自分を相手に明け渡すようなものではある。甘えることができるのも重要な要素。だが、それと「依存」とは線引きが微妙ながら、やはり違うはずだ。

 玲香さんと昌広さんは、結局、決定的な言葉はなかったものの自然消滅したような形になっている。

 「私は自分のすべてを彼にわかってほしいと思っていた。でも、彼はそうではなかったということですよね。私がつらい気持ちに陥っているときに言い寄ってきて、最終的には受け止めきれずに逃げていった。昌広さんに対しては、そういう思いしかありません。あまりにもひどいんじゃないのって……。今は責める元気さえありませんけど」

 玲香さんの言い分は、わからないでもないのだが、自分を目の前にして、自分以外の男ばかり見ている女とつきあい続けなければいけない男のせつなさもまた、わかる。

 「依存」と「恋」は違う。今の自分と友だちになったら楽しいかどうか、また会いたいと思うかどうか。自分自身をそんなふうに、少しでも客観的に見ることができたら、玲香さんの恋のありようも変わってくるのではないだろうか。

(コラムニスト:亀山 早苗)

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