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2008年06月06日(金) 11時41分

那珂川からアユが消える?オーマイニュース

 「あ! お魚釣ってる!」。

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 子供たちの駆け寄る先には、長い釣り竿を持ったおじさん。ひょいひょいと小さな魚が次々あがる。

 6月1日は、那珂川(茨城県、栃木県)のアユ漁解禁日。

  「この日を心待ちにしていた」

という前橋市出身の男性は、30年間この清流でアユ釣りを楽しんでいる。しかし今年はいつもとは様子が違う。手作りのアユのプラカードを持った那珂川漁業関係者が、家族連れなどに署名を求める光景が見られた。

 国は、総事業費1,900億円をかけて霞ヶ浦導水事業を完遂させようとしている。那珂川と霞ヶ浦を43キロの地下トンネルでつなぎ、最大毎秒15トンの水を那珂川取水口から霞ヶ浦へ流す計画だ。

 国土交通省は、目的のひとつに「水質浄化」を挙げる。「那珂川、利根川からの導水により霞ヶ浦や桜川などをきれいにする」(国交省 霞ヶ浦導水工事事務所HP)。要するに、生活用水などで汚染された霞ヶ浦を、那珂川のきれいな水で中和させようということだ。

 これに対し那珂川漁連などは現在、取水口工事の差し止めを求め仮処分を水戸地裁に申請している。工事差し止めの提訴も検討している。「清流と魚類・生態系を子や子孫に残すために」との願いに司法がどうのような判断を下すのか、裁判の経過が注目される。

 那珂川の穏やかな川面が、突然踊りだす。釣り人の真似をして、子供たちが木の枝でピチャピチャたたいている。

 「釣れない…」。

 落ち込む男の子に、思わず吹き出してしまう。そりゃそうだ。

 「でもお魚いっぱいいたのよ」。

 振り向いた女の子の目は、こちらがたじろぐほど輝いていた。

(記者:岡崎 佐和子)

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