記事登録
2008年06月06日(金) 00時00分

巨大地震に備える:災害時に携帯電話を使う5つのポイント読売新聞

 災害時のライフラインとして欠かせない携帯電話。巨大地震が起きた場合、携帯電話をどう使えばいいのだろうか。連絡手段を確保しながら、電池を長持ちさせるコツを紹介する。(テクニカルライター・三上洋)

災害が起きたら? 覚えておきたい携帯電話5つのポイント

 以前の記事「中越沖地震:災害時の命綱となるケータイ」でも取り上げたが、巨大地震が起きた場合、携帯電話には通常とは異なる現象がいくつか起きる。あらためて災害時に携帯を活用するノウハウを5ポイントにまとめた。

1 サービス中断は災害直後ではなく、数時間後に起きる


災害時には携帯電話の移動基地局車が派遣される。ただし到着には時間がかかり、カバーエリアも狭いため、全面的な復旧にはならない(NTTドコモ・自衛隊の災害共同訓練での模様:筆者撮影)

 多くの場合、災害直後でも携帯電話サービスは生きている。物理的に基地局が破壊されたらダメだが、停電だけならバックアップ用の非常用電源があるからだ。災害によって停電が起きても、携帯電話の基地局は数時間なら動く。

 ところが非常用電源は、短ければ2〜3時間、長くても数時間で切れてしまう。非常用電源が切れると、その地域の携帯電話サービスは止まってしまい「圏外」の表示になる。災害時に派遣される移動基地局・移動電源車が来るまでは、ストップしたままになるだろう。

 2007年7月の新潟県中越沖地震でも同様の現象が起きていた。地震直後は携帯を使えていたのに、数時間後に「圏外」になってしまったのだ。巨大災害直後に携帯電話が使えていても、数時間後にはダウンすることを頭に入れておきたい。

2 災害にあったら安否を「災害伝言板」へ登録

 巨大災害が発生すると、全国から安否を確かめる電話が殺到するため、発信・着信規制が行われる。回線がパンクすることを防ぐもので、2007年7月の中越沖地震では80〜90%の規制が行われた。電話による連絡は取れなくなると考えたほうがいい。


NTTドコモの災害伝言板の例。電話番号を入れて安否を入力・確認できる。他社の携帯電話番号だった場合、その会社の伝言板へリンクされる

 ただし主要な携帯電話サービスでは、音声電話とパケット通信は分離されている。そのため音声電話で規制がかかっても、メールやサイトは使えることが多い。完全にサービス中断になってしまった場合はダメだが、音声での発信規制がかかっている場合は、携帯サイトの災害伝言板を利用しよう。

 災害伝言板は各携帯電話会社が用意しているものだが、他社の携帯電話でも利用できる。自分の電話番号と「家族全員無事です」などのメッセージを文字で入力する。電話番号を知っている人ならば、誰でも安否を確認できるので便利だ。音声による災害伝言ダイヤル「171」もあるが、携帯サイトの災害伝言板のほうが使いやすいだろう。災害伝言板は、各携帯電話会社のトップページに表示される。

 1でも紹介したように、携帯電話のサービスは災害の数時間後にストップする可能性が高い。そのため災害地にいる人は、1〜2時間以内に災害伝言板に自分の安否を登録しておきたい。その後に携帯電話がストップしても、伝言板での安否情報は残るからだ。

3 「圏外」ならば電源を切ったほうが長持ちする

 もし携帯電話のサービスが中断し、「圏外」になってしまったら、携帯電話の電源はオフにしたほうがよい。電源オフでは不安になるだろうが、圏外のままでいると電池を早く消費してしまう。というのは、圏外では電話機が基地局を探すために何度も電波を出すからだ。通常なら2〜3日はもつはずの電池が、圏外だと数時間で切れてしまう。

 不安ではあるが、圏外が続くようなら思い切って電源を切ろう。必要な時だけ電源を入れ、サービスが復活していないかチェックする。災害時に電池を長持ちさせるためのコツだ。

4 避難所か携帯電話会社の公式ショップで充電サービス


NTTドコモが災害用に準備している充電機器。大量の携帯電話を一気に充電できるほか、auやソフトバンクの携帯電話も充電可能だ(NTTドコモ・自衛隊の災害共同訓練での模様:筆者撮影)

 災害発生から少し経てば、避難所か携帯電話のショップで充電サービスが始まるはずだ。携帯電話会社では、自社のショップに災害用の機器を準備している。たとえば右の写真はNTTドコモの例で、ユーザーの携帯電話を一気に充電できる機器を持っている。ドコモだけでなく他社の携帯電話も充電可能だ。

 この充電サービスは広域避難所で行われるはずだが、もしかしたらショップの店頭で行われるかもしれない。念のために近くの携帯電話公式ショップの場所を頭に入れておきたい。ただし併売店はダメで、公式ショップに限られる。「ドコモショップ」「auショップ」「ソフトバンクショップ」の看板があるお店の場所を覚えておこう。

5 災害に備えて予備電池を確保。無料でもらえることも

 災害時に携帯電話を活用するには、電池をもたせることが最大の課題となる。そのため、予備の電池を用意しておくのが望ましい。

 予備の電池は各ショップで販売しているほか、緊急用の電池パックがコンビニなどで販売されている。ただし緊急用の電池パックは、通常の電池よりも使える時間が短いほか、本来の電池パックを消耗させる恐れがある。そのため本当の緊急時以外は、できるだけ利用しないほうがよい。

 本来の電池パックの予備を入手すべきだが、場合によっては無料でもらえることもある。NTTドコモでは以下の場合に無料、もしくはポイントで2個目の電池パックを入手できる(いずれも無料の会員制度「ドコモプレミアクラブ」に入会する必要あり)。

●NTTドコモの電池パック提供制度

・2年以上同じ携帯電話を使っている場合に、2個目の電池パックを無料プレゼント

・1年以上2年未満で、同じFOMAの携帯電話を使っていれば、ドコモポイント500ポイント(500円相当)で2個目の電池パックを提供

・NTTドコモを10年以上使っている人で、1年以上同じFOMAの携帯電話を使っていれば、2個目の電池パックを無料プレゼント(2008年10月スタート)

 auには電池パックの無料制度はないが、月額315円の「安心ケータイサポート」に加入すれば、1年以上同じ携帯電話を使っている場合に電池パックを1個プレゼントしている。また3年以上になった場合には、さらにもう1個プレゼント。また非会員でも、auポイント2,000ポイント(2,000円相当)で電池パックを入手可能だ。ソフトバンクでは月額487円の「あんしん保証パック」に1年以上加入している人で、1年以上同じ携帯電話を使っている人に、電池パックを1個プレゼントしている。

 いざという時のためにも、2個目の電池パックを入手しておき、災害用リュックサックに入れておこう。また災害時に役立つ携帯電話での地図サービスについては、前回の記事「災害時に役立つ携帯電話地図サービス」を参考にしてほしい。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20080606nt04.htm