記事登録
2008年06月05日(木) 11時33分

オバマ大統領誕生なら、どうなる日米関係?ダイヤモンド・オンライン

 時計の針を1年ほど巻き戻した2007年4月25日。安倍晋三首相(当時)の訪米を直前に控えた米上院本会議で、「日本重視」の熱弁をふるった民主党系議員がいる。ほかならぬバラク・オバマ上院議員その人である。この演説でオバマ氏は、日本を指して、米国の経済政策・安全保障政策のアンカー(碇)と形容し、日米同盟の重要性を繰り返し強調した。

 実はオバマ氏の外交チームには、知日派が多い。その最たる存在は、クリントン政権下で国防総省日本担当部長などを務めたデレク・ミッチェル氏だろう。冒頭の演説の草稿づくりには、ミッチェル氏のほか、複数の知日派の知恵袋が関わったといわれる。民主党系シンクタンクの幹部は、「オバマ氏の外交チームには、日本語を流暢に操る幹部が意外なほど多い」と舌を巻く。

 大統領予備選スタート後、アジア外交といえば、中国に関する発言ばかりだったため、オバマ氏は対日外交を軽視しているとの観測が主流だった。だが、真実はそうではない。

 『日はまた昇る』の著者で、英エコノミスト誌の前編集長であるビル・エモット氏は、「前回の日米同盟の根本的な再確認も民主党政権の下で行われた」と指摘する。1995年に、ジョセフ・ナイ国防次官補(当時)の主導で、日米同盟の重要性を再確認した、いわゆるナイ・イニシアティブがそれだ。

 日本の政財界には、共和党政権を好む風潮が根強いが、拉致問題を無視したブッシュ政権の対北朝鮮宥和政策に見るように、共和党政権において、日米の二国間外交がもはや最重要視されているわけではない。クリントン政権初期の日本叩きが目立つ分、民主党の対日外交の功績はいたずらに低く評価されているのかもしれない。

 むろん、オバマ大統領が誕生したとしても、昨年4月の演説内容ほどには、日米同盟を重視してこないだろう。外交上の最優先課題はなんといっても紛糾するイラク問題であり、アジアは二の次だ。
 
 日米関係の重視の仕方にしても、台頭する中国との勢力均衡を最優先課題として、米中日のトライアングルの枠組みでその再構築を図っていくことだろう。それは、オバマ氏の外交スタッフに知中派も数多く名を連ねていることから読み取れる。ただ、このバランス感覚を指して、「日本軽視」というならば、それは日本側の甘えだ。

 日米両国は数年内に新日米安保共同宣言をとりまとめる。仮に共和党から民主党への政権交代があれば、再構築の作業は途方もないものになるだろう。しかし、中国の台頭、北朝鮮の核問題など、激変する世界情勢の中で、それは必要不可欠な労苦に他ならない。

(ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)

■関連記事
「米国統合の象徴 オバマ大統領誕生へ」 国際政治学者・藤原帰一に聞く
ビル・エモットが大胆予測! オバマはマケインに僅差で勝ち大統領に
もはや重要ではない日米関係、誰が大統領でも影響はない【週刊・上杉隆】
民主党両候補と共和党マケイン氏、経済政策の違いは何か
黒人保守派が警告! オバマは人種問題の太鼓持ちをやめよ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080605-00000000-dol-bus_all