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2008年06月05日(木) 16時52分

無殺菌牛乳を取り扱う店側の苦労オーマイニュース

 無殺菌牛乳は確かにおいしい一方で、商品が高価なために製造業者だけでなく販売業者側にも相当なリスクと苦労を負っているのではないか。そんな疑問から、とある取扱店の店長にインタビューをお願いした。

  ◇

──取扱店をほかにも直接伺ったのですが、こちらでは入荷する数が多いように映ったのですが。

 そうですかね。今のところ週2回にしています。

──ほかの店では金曜日と伺いましたが、こちらでは?

 月曜と金曜です(記者注:週末に遠方から買いに来る人が多いと思われる)。

──では、なぜ無殺菌牛乳を入荷しようと思ったのでしょうか?

 きちんとしたものを提供したいというのが一番の理由ですね。

──入荷すると決めたのは、店長の判断ですか?

 そうですね。無殺菌牛乳にしましても、このような牛乳は通常では手に入りませんが、それでも皆さまのお手元に届けたいという私たちの気持ちもありますし、お客さまからもそういうニーズがありますので。

──先ほど、お店の近くをぐるっと歩いて回ったのですが、生活クラブ生協の車を何台か見かけまして、こちらの地元の皆さんは「食」に対するこだわりは強いところなのかな、と思いまして。

 それはあると思いますね。実際、うちで(無殺菌牛乳のほかにも)取り扱っている商品について問い合わせがありますし、無殺菌牛乳についても数多くの問い合わせを受けています。

──手に入れたいと思っても、生活クラブ生協でも手に入りませんし、近くで取り扱っているお店もありませんしね。

 無殺菌牛乳にしても、価格は通常の8倍くらいしますから、毎日飲むって訳には行かないと思うんです。牛乳についてお詳しいようですからご存じかと思いますけれど、あちらの無殺菌牛乳もノンホモ牛乳ですから、(製造業者も07年6月より消費期限を5日から8日へと伸ばすなど、できる限りの対策を行っているが)賞味期限内であっても長く置いていると(脂肪分が)分離してしまいますので、(品質上問題がなくても)ギリギリまで置けないんです。

 最近ではニュースとかテレビなどで紹介されて知名度がだいぶ上がったのですが、うちが取り扱いを始めた当初は、それほど知名度もなかったので苦労しました。実際、うちらと同じように取り扱っていたお店にしても、採算が取れなくて中止したところもいくつかありますし。ただ、私どもとしましては、お客さまにきちんとしたものを届けたいということを最優先させてですね、多少割に合わなくても続けていくことが大切だと考えまして、そうすることで、ここに行けば手に入るという信頼関係が生まれまして、また買いに来るお客さまが少しずつ増えてきたのだと思っています。

──お忙しい中、たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました。また買いに伺います。

 こちらこそ、ありがとうございました。

  ◇

 取材の際に、無殺菌牛乳のほかにもノンホモ牛乳・低温殺菌牛乳・パスチャライズド牛乳(低温殺菌の一種で、72℃15秒殺菌)など、さまざまな牛乳が陳列している様子を写真で紹介しようと思い、店長に確認した。すると、

 「個人的には私としてもいいかな、とは思うんですけどね。ただ、写真にしても店の名前にしてもですね、いったん(記事としてインターネットに)出してしまいますと、いつも置いてあるという印象が強くなりますから、それを見て遠くからいらっしゃるお客さまをがっかりさせるようなことは、私としては避けたいんですね」

 との回答だった。これらの言葉や店長の最後まで丁寧な対応からは、地元の人に末永く愛されたい、そんな店長の思いが私にも伝わった。

 無殺菌牛乳に限らず、高価な商品を確実に販売するには、品質の高さや生産業者側のメディアへのPRだけではなく、販売業者側のお客さまからの視線に立った配慮が必要なのだと、取材を通じて実感した。

(記者:有吉 慶介)

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