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2008年06月05日(木) 11時48分

自分が勝てる「戦場」はどこか?〜佐藤義典コラムオーマイニュース

 前回まで、「自分の強み」について考えてきました。ここから、ではその強みを活かして「どこで戦うのか?」という「戦場」について考えていきましょう。

(合わせて、「戦略BASiCSの解説ページ」をお読みいただくと、全体像がつかみやすくなります)

■戦場はどこか?

 どの会社もどこかの「戦場」で戦っています。ドトールやスターバックスは、「低価格カフェチェーン」で戦っているでしょう。

 マクドナルドや吉野家はファストフード戦場で戦っています。

 セブン−イレブン、ローソン、ファミリーマートなどはコンビニエンスストア戦場で戦っています。それぞれの戦場にライバル(競合)がいるわけですね。

 同じように、私たちビジネスパーソンもどこかの戦場で戦っています。

■まずは広くとらえる

 会社の場合は、業種・業態が戦場の切り口となることが多いです。ドトールとスターバックスは「カフェチェーン」という業態で戦っています。それが直接の競合になります。

 しかし、その一方で、ドトールやスターバックスは、マクドナルドとも競合しています。どちらでもコーヒーが飲めて、ちょっと休むことができるからですね。

 マクドナルドはコンビニエンスストアとも競合しています。テイクアウトの食事、ということではどちらでも対応できるからです。これが、間接的(業種を超えた、という意味です)な競合になります。

 同様に、私たちビジネスパーソンが戦っている戦場にも直接競合と間接競合がいます。直接競合は、同じ会社の同期や1〜2年前後の社員の方々ですよね。出世だけが人生の目的だとは思いませんが、色々な意味で仲間でありライバルです。

 間接競合は、もっと広くなります。同世代の日本にいる人全てが競合、といってもいいでしょう。もはや転職は一般的になってきましたので、自分が転職するかもしれませんし、自分がいる会社に他社から転職してくる人がいるかもしれません。

 その人たちよりも市場価値が高ければ、転職に有利になるでしょうし、自社に必要な人材ということにもなります。

 ですので、狭い意味で同期の仲間と戦う、という意識をもつよりは、「自分は日本にいる同世代の中でどのくらいのところにいるんだろう?」という意識を持ったほうがいいと思います。

 もちろん、転職しないという人生もあります。その場合でも、「転職できる」という「選択肢」を持っておくことは非常に重要です。会社に何かがあったときの備えにもなりますし、会社でどうしても耐え難いことがあったときに、心身を傷める前に何とかできる手段となるからです。

 さらに広い意味では、今や人材競争はグローバルになっています。ITのプログラミングなどはインドにアウトソースされることもあります。コールセンターの対応人員が中国にいることもあります。

 その方よりも高い価値を提供できなければ、私たちに高い人件費を払うよりは、外国にアウトソースしたほうがいい、という考えが日本でも一般的になる可能性もあります。

■「どこで戦うか?」を、絞り込む

 とは言え、「世界中の人と競争している」という定義の仕方では、自分がどう戦うか、というガイドラインにはなりません。あまりに広すぎるからです。

 広い意味で世界に競合がいる、と考えたあとで、今度は絞り込んで、どの戦場で戦っていくのか、と考えていくわけです。その際、絞り込みの切り口はいくつかあります。

1)職種

 まずは職種。わかりやすいのは、「営業」「エンジニア」「プログラマー」「マーケティング」「人事」「経理」などです。

 外資系の会社などでは、経理担当者がいきなり営業部に行く、ということはあまりありません。その職種の「プロフェッショナル」として生きていくわけです。私は、MBA取得後はマーケティングの「プロフェッショナル」として、外資系で10年以上マーケティングだけをやってきましたし、今後もマーケティングを中心にした戦場で戦っていきます。

 ある職種を戦場とする、ということは、会社は変わっても、その職種は変えずに生きていく、ということです。私の場合は「マーケティング戦場」で一生戦っていきますが、その場合、他のマーケターの方々が競合となります。その方々と比べて自分はどうなのか、という認識を持つことが必要になります。

 同じ会社に勤め続ける場合でも、どこかの専門性を持っておくことは良いと思います。よく「あの社長は経理畑の人だ」などという言い方をしますが、経理や財務に強みをもった社長、ということですね。会社として財務を強化する必要性があるときには、そのような社長が適している、ということも言えます。

2)業種

 ただ、日本の会社にはゼネラリスト志向の会社も結構あります。昨年まで営業部にいたかと思うと、突然人事部や総務部に異動することはよくあります。

 日本の会社にいた4年半のあいだに、私は支店の営業を2年、本社で企画を1年、その後、子会社でマーケティング、とトレーニングという意味も含めて3回職種が変わりました。若いうちにそのように色々な職種を体験できることは、日本の会社の良さでもありますね。

 その一方で、何でもできる、ということは、何にも強みがない、ということと同義です。業界事情に詳しくなれば、その業種で専門性がある、ということになります。

 これも、同じ会社に勤め続ける場合でも自分の業種はもちろんですが、どこか他の業種に強くなっておくと良いかもしれません。営業の場合にはそれが顕著で、営業にいくお客様の業種業態をよく知り、「この業種への営業はアイツが強い」という評判を勝ち取ることもできるでしょう。

3)職種×業種

 多くの場合は、職種と業種の組み合わせで絞ることになります。例えば、「メーカーの経理」という戦場で戦う場合、工場の原価会計、などの知識を活かして転職が容易になるでしょう。「金融のシステムエンジニア」、という戦場もありえますよね。その場合は、IT業界で金融業界を担当してもいいし、金融関係の会社のIT部門でも働けます。

 さらに絞っていくこともできます。例えば「マーケティング」と言っても非常に広く、戦略を考えることも、広告やPOPを作ることも含まれます。

 マーケティングの中でも、ある業界の広告宣伝に強い、など、戦場をさらに絞っていくこともできますね。業種という意味でも広く、メーカーと言っても、精密機械もあれば、素材に近いものもあるでしょう。

 職種と業種で考えていく場合、自分の会社がいる業種や今やっている職種はもちろん今の戦場になりますが、業種や職種をどのくらいの広さで捉えるか、というのも考える際の重要なポイントのひとつです。

  ◇

 まとめますと、キャリア戦略を考えるにあたって、自分の強みを考えると同時に、そもそも「自分はどこで戦おうとしているのか?」と考えることが重要なのです。それによって身につけるべき知識・経験・スキルが全く変わってきますよね。備えるべき「強み」も変わるんです。

 私は現在は「マーケティングコンサルティング」戦場で戦っていますし、これからも多分「マーケティング」に軸足をおいたことをしていくつもりでいます。

 あなたの戦場はどこですか? あなたはこれからどこで戦っていきますか? 長期的な、大きい意味で考えてみてください。

(記者:佐藤 義典)

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