経営破たんした英会話学校「NOVA」(破産手続き中)の社員が福利厚生のために積み立てていた約3億円が昨年7月、社員側に無断で関連会社を通じNOVAの口座に移されていたことが、大阪府警の調べでわかった。
猿橋(さはし)望・元社長(56)の指示だったといい、経営難だった同社で解約者への返還金などに充てられたとみられる。府警は、猿橋元社長が流用した疑いがあるとみて、業務上横領容疑での立件を視野に本格捜査を始めた。
NOVA関係者や捜査関係者によると、同社内には、社員の互助組織「社友会」があり、社内旅行費や慶弔費などに充てる目的で、毎月、給料から天引きして会費を徴収。積立金の口座は経理担当者が管理していたが、実際に支出される機会は少なく、残高は約3億円に達していたという。
昨年6月、NOVAは、勧誘時の虚偽説明や誇大広告などの違法行為を理由に、国から一部業務停止命令を受け、影響で契約を解除する受講生が続出。積立金の移動があったのは、この翌月で、約3億円全額が、元社長がオーナーだった関連会社「ノヴァ企画」を経由し、NOVA本体の口座に流れていた。
府警は、NOVAが同10月に会社更生法の適用を申請した後、捜査に着手。事情聴取に、当時の経理担当者は積立金の移動を猿橋元社長から命じられた、と説明したという。
猿橋元社長の代理人の弁護士は「積立金が結果的に流用されたのは事実だが、資金繰りの見通しがつけば返すつもりだった」としている。
NOVAの事業は現在、学習塾運営会社「ジー・エデュケーション」(名古屋市)に引き継がれている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080604-OYT1T01127.htm?from=top