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2008年06月04日(水) 20時21分

与党案軸に単純所持違法化案を提出へオーマイニュース

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童買春・児童ポルノ処罰法の改正問題で、政府与党は、自民・公明の基本合意内容を元にした改正案を提出する。「単純所持」の違法・処罰化を設ける方針。しかし、禁止する児童ポルノに漫画やアニメ、ゲーム等の表現は含めない。

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■与党案は単純所持違法化。漫画・アニメ等の規制は今後の課題へ

 これまで自民・公明の与党では、「児童買春児童ポルノ禁止法見直しプロジェクトチーム」をつくり、改正案を大筋で合意している。その内容は、こうだ。

・何人もみだりに児童ポルノを所持し、保管してはならない。
・自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持・保管した者は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金に処する。
・インターネットプロバイダー(接続業者)は、児童ポルノ被害がインターネットの利用で容易に拡大することにかんがみ、捜査機関への協力や被害拡大を防止する措置を講ずるよう努める。
・(付則)児童ポルノに類する漫画やアニメなどの規制と、インターネットを利用した児童ポルノの閲覧を制限する措置は(1)法改正後の施行状況(2)児童の権利擁護に関する国際的動向(3)関連する調査研究と技術開発の状況−などを勘案しつつ検討、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

 与党は民主党とも協議を行っていた。民主党内でも、与党案に賛同する議員もいたが、問題が大きくなるとして、独自案を作成していた。

■民主案は収得罪の新設。対象を限定し、児童ポルノの定義も見直し

 民主党の独自の骨子案によると、児童ポルノの定義を見直すことにしている。現行法の定義では、3条2項で、

 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

とあるが、民主案では、

 性器などをことさらに強調するなどして示す児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

とする。また、3条3項にある「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」は削除する。

 その上で、単純所持の処罰対象を絞り込んで、1)対価を支払って取得、2)性的目的など所持、に限定する。

 つまり民主は「収得罪」の新設を主張した結果だ。そのため、双方の主張には隔たりが大きく、与党側が自民・公明の基本合意を元に法案を提出ことになった。

 民主党では、吉田泉議員が衆議院青少年問題特別委員会(4月10日)で、関連データを出し、質疑を行ってきた。国連犯罪統計によると、10万人あたりの強姦認知件数で最も多いのはカナダで78人、次いでアメリカ32人。日本は2人弱で、G8の中で最も低い。

 また、児童ポルノの利用度について、イタリアの児童保護団体によると、アメリカが全体の23%。ドイツが15%。ロシアが8%。日本は2%弱で、G8で最低になっている。

 さらに、児童ポルノの発信については、イギリスのインターネット監視財団が調査によると、アメリカが54%、ロシアが28%、ヨーロッパが8%、アジアが7%。

 吉田議員は、日本に対して児童ポルノ対策を求めてきたシェーファー駐日アメリカ大使の発言「日本とアメリカが児童ポルノの二大消費国」ついて批判した。

■ネット世論を気にする国会議員

 ただ、自民党でも与党案に明確に「Yes」を表明していない議員がいる。

 早川忠孝議員はブログ「一念発起・日々新たなり」で、与党案に反対のネットユーザーのコメントを気にしている。一方、民主党でも、中村哲治議員がブログ「日本再構築」で、与党案のようにはならない、と明言するなど、両党ともに、ネットユーザーの動向を気にしている。

(記者:渋井 哲也)

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