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2008年06月04日(水) 14時28分

「日本の救援活動には本当に感謝している」オーマイニュース

 四川大地震被災者へのチャリティを兼ねた中国映画『雲南の花嫁』試写会が6月3日夜、東京都内で開かれた。四川省成都出身のチアン・チアルイ(章家瑞)監督は舞台あいさつに立ち、「被災地での日本の救援活動は、多くの中国人に大きな感動を与えた。温かな援助の手を差し伸べてくださったことに感謝を申しあげたい」と述べた。

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 映画は7月26日から全国ロードショーされる。監督が四川省出身で、映画に描かれた少数民族イ族が四川省にも多く居住していることにちなみ、映画の興行収入の一部を日本赤十字社を通じて四川大地震への義援金にあてる。上映期間中は劇場内にも募金箱を設置し、寄付を募る。すなわち、映画を見ると、チャリティーになる仕組みだ。

 上映前に会場で回された募金箱を手渡された章家瑞監督は、

 「現地に駆けつけ、がれきの下から何とか被災者を助けようとしてくれた日本の救援隊の心意気は中国全土に大きく報道された。四川の人々も本当に感謝をしていて、(この映画の宣伝で)日本へ行くといったら、『日本の皆さんにお礼を伝えて』と多くの人に頼まれた」

と「謝謝」を繰り返した。

 章監督自身の家族や友人は無事だったが、綿陽にいた大学時代の知人の1人が行方不明になっているという。

 四川は、2005年にも反日デモや日本製品の不買運動が起きた、反日感情の強い土地だ。だが章監督は、「日本に対する誤解——理解が足りないことが反発の原因だったのではないかと思う」とし、そうした反発にも変化が生まれていると話す。

 「今回、日本の救援隊は、まだ余震の激しい現地で最前線に立ち、一生懸命に働いてくださった。その姿が報道され、中国国内の日本に対する評価は非常に高まった。日本と中国の人々が互いに理解し合える土壌ができたと思う。胡錦涛主席が訪日したばかりのタイミングでもある。日中間の交流が深まるものと期待したい」(章監督)

 ところで、映画『雲南の花嫁』は、泥臭い政治社会の話題とは関係がない。キュートな新婚夫婦が織りなすハートフルラブストーリーだ。

 雲南省の少数民族の1つ、イ族には「結婚した男女は3年間別々に暮らし、そのあいだは結ばれてはならない」という古い風習が伝わる。だが奔放に育った花嫁は、好きな人と一時も離れたくなくて、さまざまな騒動を起こす。けなげだが元気の良すぎる花嫁に振り回される真面目な新郎はついに……。

 北京五輪に向け急速な近代化が進む中国には、一方で多くの少数民族が存在し、それぞれの村で民族衣装を身にまとい、古くからの伝承を重んじて暮らしている。都市化が進む中で、文化や伝統をどう守っていくのかという命題も、作品に内包されたメッセージの1つになっている。

 奔放なヒロインには、チャン・チンチュー(張静初)。「ポスト・チャン・ツィイー」といわれる美貌ながら、少女から老女まで演じ分ける演技力が国際的にも高く評価されている。彼女の起用は3作目というチアチエ監督が、

 「普段は目が小さいのに、カメラを向けるとみるみる目が大きくなって(笑)何かを語り出す目になる。普段は口数が少ないのに、スクリーンでは輝くような笑顔を見せてくれる。それに、ほかの俳優と違うのは、演劇科出身ではなく監督科出身であること。いろいろな修養を積んでおり、聡明さが存在感に現れている。変化に富んでいることが魅力で、将来性の高い女優」

と惚れ込む実力派。本作では雲南の美しい風景と文化、彼女の瑞々しい演技が作品の華となっている。

(記者:軸丸 靖子)

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