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2008年06月04日(水) 12時27分

答弁でのペーパー棒読みをどう思うかオーマイニュース

 老舗料亭「吉兆」の廃業記者会見で社長の女将が膝の上に想定問答集を置いて、うつむいたままそれを読み上げたのが話題になった。偽装問題発覚時の記者会見で息子でもある取締役に答弁内容を「ささやいて指示」していた女将とは様変わりのように映った。

 この様子を見たリスク・マネジメントの専門家は、「この場合は前を向いて自分の考えを言うべきであった」とコメントしていた。

 しかし、「前を向いて」というは易し。悪者扱いをする社会部記者の猛者相手に平静ではいられないだろう。いわんやそんな場になれていない女将にとっては大変な仕事である。

 想定問答集を作成し、それを使ったことは当たり前だと思う。株主総会や不祥事会見などでは総務部門や顧問弁護士が想定問答集を作成するのは当たり前。質問もそれを見ながらの回答になる。

 問題は想定問答の有無ではなく(これは有った方がいい)、それを棒読みするか、あくまで参考に自分の考えで説明できるかである。

 この女将も前を向いて、自分の考えで答えた方が印象は良かったのかもしれないが、本人にとっては不安この上ないことである。下手な答弁をすればそれ以上に問題が大きくなる可能性がある。

 弁護士の同席も「まずい」ということであったが、家宅捜索をされ、法令違反の可能性があれば、それに関連する質問には専門家のアドバイスも必要になる。「司直の手も入っているので、この点に関してはコメントを差し控えたい」という答弁もできるだろうが、この場合は、自分の考えを訥々(とつとつ)と話す方が良いかもしれない。

 一方で、ペーパーの棒読みを禁止しているところがある。それは国会の大臣などの答弁である。衆議院、参議院の規則で禁止しているが、罰則はない。

 委員会などの審議で、担当大臣が閣僚の作成した答弁書を読み上げているシーンをよく見るが、これはまずい(あらかじめ質問者の質問書は提出されているので、それに担当の官僚が答弁を作成している。国会が開催されると深夜までこんな仕事が続くという)。

 大臣として管掌しなければならない仕事に精通していないし、勉強もしていない。自分の考えを自分の言葉で答弁することもできないと見られる。本来であれば規則に違反する行為である。

 万一、失言などすると政策がつぶれる危険もある。国会での審議は真剣勝負の場になるのだ。

 今、国会で公務員制度改革法案が成立しそうである。渡辺喜美・行革相は「政治家主導政治に変えなければならない」と強調するが、当然のことである。政治家がもっと勉強し、官僚顔負けの政策マンにならなければならない。不勉強の議員が大臣になることは官僚の思うツボである。

 国会議員の意識改革と資質の向上が問われている。年間1億円もかけてこの程度の人材かと思うと腹が立つ。

(記者:矢本 真人)

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