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2008年06月04日(水) 22時08分

<後期高齢者医療>意図的に「負担減」強調? 厚労相算定毎日新聞

 「低所得者ほど負担が軽減され、高所得者ほど重くなる」。後期高齢者医療制度の導入に当たり、厚生労働省が繰り返してきた説明は、同省が4日公表した調査結果で、事実と異なることが明らかになった。軽減の「根拠」となっていた国民健康保険保険料の算定方式が、高齢者人口の実態を反映しないものだったためで、意図的に「負担減」を説明してきたと言われても仕方がない。

 調査の結果、低所得世帯のうち保険料額が下がったのは61%。つまり39%はアップした。与党の軽減策を取り入れても27%の世帯は上がる。

 厚労省が「低所得者は軽減」と説明してきたのは、国民健康保険の算定方式に市町村の多くが「4方式」を採用していることを念頭に置いてのことだ。

 後期高齢者医療制度の保険料算定方式は、「均等割り」と「所得割り」だけなので、「資産割り」などが加わる4方式から移行すれば、一般的には負担が軽くなる。半面、平均すれば国保より新制度の方が所得割りを計算する保険料率が高いため、高所得者の負担が重くなる。

 今回の調査結果でも、4方式の市町村では低所得世帯の73%(与党案では79%)が負担減となり、「68%減」の高所得世帯より負担軽減の割合は大きい。

 しかし、「2方式」の国民健康保険はもともと保険料が低いうえ、低所得者を対象に独自の減免措置を行う名古屋市など財政が豊かな大都市の多くが採用する。そこから新制度に移行すれば、低所得者の負担は跳ね上がる。逆にこれまで減免措置がなかった高所得者は、結果的に負担が下がる。調査結果では2方式の低所得世帯の78%で負担増となり、与党の軽減策でも31%はアップする。一方で高所得世帯の負担増は15%(負担減85%)にとどまった。

 厚労省は「2.4%の市町村しか導入していない」との理由で2方式を例外扱いしてきたが、加入者数ベースでは全体の14.6%を占める。このため今回の調査結果では全体の傾向を左右した。

 3方式の市町村でも、負担が軽減した低所得世帯は60%(与党案68%)なのに、高所得世帯は84%で「高所得者優遇」との結果になっている。

 厚労省は「4方式が主流だ」とするが、4方式を採用するのは郡部の町村が多く、加入者数ベースでは5割を切っている。【吉田啓志】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080604-00000124-mai-pol