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2008年06月03日(火) 13時12分

南極観測船「しらせ」〜現役最後の一般公開オーマイニュース

 5月31日と6月1日、南極観測船「しらせ」が母港の横須賀港で一般公開された。現役最後の一般公開とあって、子ども連れの家族など大勢の人びとが訪れて長年の労をねぎらい、別れを惜しんだ。31日にはあいにくの小雨で出足はややにぶかったものの、1日は晴天に恵まれ、自衛隊広報官によると、来場者は1 万人に達した。
ふ頭から見上げる艦体は大きい。基準排水量1万1600トン、速力19ノット。ディーゼル機関6台で発電し、直流

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 25 年にわたって毎年、南極観測隊員と資材を昭和基地に運んできた「しらせ」は、海上自衛隊に所属する、わが国唯一の砕氷艦。1.5メートルの厚さの氷を連続砕氷する能力がある。氷が1.5メートル以上になるとチャージングといって、後進・前進を繰り返して氷を砕く。広い飛行甲板と格納庫を持ち、大型ヘリ2機搭載可能。08年4月に第49次観測隊を乗せて帰った航海を最後に、耐用年数に達し、退役する。

 1981(昭和56)年に文部省(当時。現・文部科学省)の予算で建造され、海上自衛隊によって運用されてきた。ぼくが訪れた1日、艦内を案内し、質問に答えていた乗組員の1人は、「いよいよお別れとなると感慨深いものがあります」と、愛着もひとしおといった感じで話していた。

 1956(昭和31)年、第1次観測隊が初代砕氷艦「宗谷」で出発し、翌年、昭和基地を開設して越冬観測を始めてから50周年を迎えた日本の南極観測。オゾンホールの発見や深海の氷床掘削など輝かしい成果をあげた。

 「しらせ」は2代目の「ふじ」の後継艦として1982(昭和57)年に就役し、毎年、東京・晴海ふ頭と南極の昭和基地のあいだを往復して、南極観測の歴史を支えた。世界でトップクラスの砕氷能力を持つ同艦は、氷に囲まれて動けなくなったオーストラリアの南極観測船を3回救出するなどの“戦歴”もある。

 後継の新しい砕氷艦「しらせ」は、舞鶴のユニバーサル造船で4月に進水式を終えて、現在、艤装(ぎそう)工事中で、完成予定は09年5月。08年11月に出発する第50次隊には間に合わないが、それまでは、「しらせ」が救出したこともあるオーストラリアの砕氷船オーロラ・オーストラリス号がチャーターされる。

 「しらせ」の退役後の身の振り方は未定。引き取って保存したいという自治体の誘致案もあるが、果たして第2の人生はあるか。大型船で保存費用がかさむので、解体される可能性も高い。

(記者:矢山 禎昭)

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