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2008年06月02日(月) 11時35分

消え行く日雇い派遣の是非〜ネット難民と日払いツカサネット新聞

5月19日の毎日新聞によると、人材派遣大手のグッドウィル・グループ(GWG)が、100%子会社で日雇い派遣最大手のグッドウィルの売却を検討していることがわかったそうです。売却先は現在検討中で、来月にも決定される見通し。

グッドウィルは、相次ぐ違法派遣の発覚から派遣者数が激減、営業所の統合も相次いでいます。

日雇い派遣業界自体が、ワーキングプアの温床となっているという見解から、風当たりが冷たくなっている現状にあります。グッドウィルのみならず、他の日雇い派遣業者も、これから規模を縮小せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれません。

日雇い派遣でよく言われるのは、いわゆる「ピンハネ」の問題。厚生労働省などの発表などから一般に言われているのは、3割が派遣業者のものになっているということ。つまり、一般にピンハネ率30%ということです。

もちろん、業者によって数字は変わってくるでしょうし、そもそも中間手数料を受け取ることに異論はありませんが、この額はいったいどうなのでしょう?

日雇い派遣で生計を立てる人には、住所不定の人も多く含まれています。そして昨今話題に上るのは、ネット難民という人々。

住所を得るには様々な諸経費がかかり、更に保証人をどうするかといった問題も抱えています。彼らはそれを負担できず、一見すると割高だけど、生活するには充分というネットカフェを仮の住処にして働いているのです。

日雇い派遣業界の存在は、彼らのような低賃金者を中心に支えられているといっても過言ではありません。

もっとも、その日にお金をもらえるということが、低賃金労働者にとってどれだけ魅力的なのか、ということを忘れてはいけません。明日を食いつなぐのに精一杯な人にとっては、中間のピンハネに憤慨する余裕もなく、ただ手元にそれなりの額が残ることが重要なのだと、現在ネット難民として生活する知り合いに聞いたことがあります。月末に振り込まれる金ではなく、もらいにいってすぐに受け取れる現金が、何よりも重要なのだそうです。

かく言う私自身、実はグッドウィルの登録者の一人です。もっとも、こちらはただ、「遊びすぎた!」「ちょっと欲しい本があるけど高いなぁ」と思ったときに利用するだけ。いわばお小遣い稼ぎでした。

確かに、そういった学生などにとって、日雇い派遣は便利です。特定の企業と雇用契約を結ぶわけでもないので、責任感の軽さから、気軽に利用する人は多いでしょう。

そういった人にとっても、日雇い派遣は魅力的であるのです。

ただこの業界を潰すことが、日本の雇用に重要なのではありません。日雇い派遣業者がここまで業績を伸ばした背景にある、日本の経済状況、そこからくる就職状況、そして根幹にある就労契約の様態そのもの、などなど。

ただ悪いところを潰していくだけでは何も残りません。よいところを見つけて伸ばすか、もしくは代替のものを作り上げていくか。

問題の本質を見極めなければなりません。

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(記者:諒)

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